ブラジルサッカー界の「王様」ペレ氏(67)が今月13日、ブラジル南東部のサンパウロ州内を車で移動中に拳銃強盗に襲われた。22日付の地元紙などが報じている。強盗はペレ氏と運転手から金品を強奪したが、すぐに「王様」だと気付いて仰天。金品の一部を返して退散していったという。過去にも強盗を“顔”で追っ払った経験のあるペレ氏。その威光は、まだまだ健在のようだ。
22日付のブラジル地元紙「エスタド・ジ・サンパウロ」によると、ペレ氏はサンパウロ州沿岸部のグアルジャ市のトンネルの入り口で、乗っていた車が渋滞に巻き込まれたところ、突然拳銃やナイフを持った若者約10人に囲まれたという。
強盗グループは運転席側と助手席側の二手に分かれ、車窓から拳銃を突き付けると「有り金を全部出せ」と脅した。ペレ氏と運転手は、抵抗することなく要求に素直に応じ携帯電話や金のネックレス、高級腕時計などを差し出したという。
ところが、運転席側の強盗らが助手席に乗っているのがペレ氏だと気付き、慌てて運転手から奪った品々を返却。その一方で、助手席側から迫った方は「王様」とは分からなかったようで、同氏から奪ったネックレスなどは返さず、そのまま逃げ去った。けが人は出なかったという。
ペレ氏はサンパウロから自宅があるグアルジャに帰る途中だった。グアルジャはビーチリゾートとして有名だが、事件現場の近くには「ファベーラ」と呼ばれるスラム街もある。今回と同様の手口で、渋滞中の車を襲いすぐにファベーラに逃げ込むという手口が頻発していた。現在サッカー協会などの役職にも就かず、CM出演などで悠々自適の生活を送るペレ氏。18日にブラジル国内で開催されたW杯南米予選ブラジル対アルゼンチン戦を観戦し、その時に友人に強盗事件を話したことで、マスコミにかぎつけられたという。
別の地元紙には、ペレ氏は脅された際に「私はペレだが…」と名乗ったが、強盗は同氏の訴えに耳を貸さず金品を奪っていったとも報じられている。今回の事件について本人は声明を出しておらず、また被害届も出していない。強盗団は今も逃走中だ。
ペレ氏は1999年にも強盗事件に巻き込まれたことがある。サンパウロ市内で信号待ちで車を止めたところ、強盗に拳銃を突き付けられた。しかし強盗はすぐにペレ氏だと気付き「すみませんでした」と平謝りして何も取らず逃走した。
この事件の直前に、同じ元ブラジル代表の名FWロマリオ氏(42)が自動車強盗に遭った際、強盗はロマリオ氏と分かっても高級車を奪ったため地元では「さすがペレ。格が違う」の声が上がったという。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20080624-OHT1T00039.htm