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2008年06月24日(火) 23時29分

【独裁の果て〜NOVA元社長逮捕】「これでおれも銀行頭取かよ」産経新聞

 平成13年末に破綻(はたん)した石川銀行の不正融資事件に絡み、金沢地検の取り調べを受けたNOVA顧問(当時)の、26ページにわたってつづられた供述調書がある。同行から増資への協力を懇願されたNOVA元社長、猿橋望(さはしのぞむ)容疑者(56)が、「ワンマン社長」らしく鶴の一声で承諾し、得意絶頂となっている姿が生々しい。

 13年4月中旬、大阪・心斎橋のNOVA統括本部11階の社長室。猿橋容疑者は同行の頭取、専務の2人と向きあった。2人は「好きなポストを差し上げますから、何とか65億円を貸してほしい」と懇願した。当時、同行は増資70億円分の引き受け先が見つからず、切羽詰まっていた。

 困惑した猿橋容疑者は2人を応接間に下がらせ、顧問に「大丈夫かな」と相談した。顧問は「やめた方がいいですよ。もしやるとしても弁護士や公認会計士を入れて精査してからにしなきゃ」と進言。しかし、猿橋容疑者は頭取の言葉を信用したのか、「よし貸そう。銀行だから心配いらんだろ」と融資を決断した。

 頭取らは喜びのあまり、「NOVA銀行と思ってもらって結構です」などと持ち上げた。2人が帰った後、慢心した猿橋容疑者は冗談を言って笑いとばした。

 「これでおれも銀行の頭取かよ」

 融資後、1カ月を経過しても、65億円が戻る気配はなかった。事態に気づいた猿橋容疑者は、顧問に「このままだと株主総会が開けない。何とかならないか」と泣きついた。猿橋容疑者自らも、取り立てに金沢へ出向く騒ぎになった。

 NOVA関連各社は、同行から250億円超の巨額融資を受ける見返りに、融資の一部約120億円を増資名目で銀行側に還流させる「見せかけ増資」に手を染めていた。不正な取引にもかかわらず、猿橋容疑者が「250億円を融資してくれるなら、増資を引き受けよう」と明言していたことが、供述調書にも記されている。

 不正融資事件の公判で、検察側はNOVA側の関与も指摘したが、最終的に罪には問われなかった。しかし、増資の代わりに受け取った株は同行の破綻で紙くず状態。それがNOVAの経営を最後まで苦しめたと指摘する声は多い。
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 猿橋容疑者は実質的にNOVAの7割以上の株を所有し、配当や役員報酬などで多額の収入があった。ピーク時の資産は100億円ともいわれ、破綻後、その金満ぶりに批判が集まった。象徴が、大阪・難波のオフィスビル20階にあった「豪華社長室」だった。

 元側近は5年ほど前、完成したばかりの豪華社長室に案内された。猿橋容疑者は「いいでしょう」と言いながら、高級酒が並ぶバーカウンターや窓からの眺望、8畳の茶室などを見せびらかした。

 破綻直後、当時の保全管理人が豪華社長室をマスコミに公開し、「会社の私物化」と批判された。猿橋容疑者は「社長室でなくVIPを案内するモデルルーム」と反論した。元側近も「取締役会を開くこともあったし、銀行関係者を案内してお茶を出したこともあった」と完全な私物化は否定する。

 ただ、奥のベッドルームやシャワーの存在までは知らなかった…。しかし、豪華社長室はすでに改装され、今は空き部屋となっている。
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 全国30万人の受講生を路頭に迷わせ、公の場から姿を消していた猿橋容疑者が大阪府警に逮捕された。NOVAを急成長させた「超ワンマン社長」の軌跡を追う。

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