2008年06月24日(火) 14時47分
<不眠症>日本人の2割にも 慢性なら薬は不適(毎日新聞)
日本人の眠りは短くなっている。NHKの全国調査によると、平日の平均睡眠時間は1960年に8時間13分だったが、05年は7時間22分だ。専門家の間では、不眠の症状がある人の割合は2割余りと言われる。
「体に必要な睡眠時間は同じなので、現代では少しの不眠でも、昔より睡眠不足に陥りやすい」。大阪府こころの健康総合センター(大阪市)の渡辺琢也医師は話す。
必要な睡眠時間は個人差が大きいが、子どもは8〜9時間、高齢者は6時間程度眠ればよいとされる。そのほかの大人は、その間の時間を目安としている。
主な不眠の症状には▽寝つきが悪い▽途中で何度も目が覚める▽早すぎる時刻に目覚め、その後眠れなくなる▽ぐっすり寝た気がしない−−の4項目がある。
医学的に「不眠症」と診断されるのは、こうした症状が原因となって▽眠くてたまらない▽集中力や意欲が下がる▽不眠に悩む−−などの状態に、昼間に陥る場合を指す。
昼間の活動に支障がなければ、不眠症ではなく、渡辺さんは「医師にかかる必要はないでしょう」と言う。
■一過性か慢性か
昼間も困るときはどうするのか。まず、不眠が一過性なのか慢性なのかを見極めたい。
一過性は、イライラした時や一時的に心配事のある時などが当てはまる。放置してもよいし、薬局で睡眠薬を買う方法もある。
問題は慢性の不眠で、さまざまな原因がある。
一つは生活習慣の乱れだ。寝る直前まで仕事をしたり、不規則な労働時間や交代勤務を強いられる人は要注意だ。また、お酒やたばこをたしなむと、眠りの質を悪くする。コーヒーなどカフェインのとり過ぎも問題だ。
病気も原因になる。うつ病など精神疾患に加え、睡眠時無呼吸症候群、夜もトイレが近くなる前立腺肥大、眠りを邪魔する痛みやかゆみも不眠を招く。また、薬の副作用も原因になるし、複数の要素が重なる例も多い。
「慢性の場合、睡眠薬の購入はお勧めできない。本来の原因が解決しない上に、病気の発見を遅らせる。不眠がつらければ、精神科か心療内科を受診してほしい」と渡辺さんは話す。
■副作用に注意
医師にかかって睡眠薬をもらっても、その晩からぐっすり眠ることができるとは限らない。不眠の解決には原因を除く治療も大切だ。薬で眠ろうとするだけでは、次第に量は増え、副作用もある。このため、最初は、睡眠薬を少なめに出す医師も多い。
病院の睡眠薬は「ベンゾジアゼピン系」という薬が中心だ。飲んだら30分ほどで布団に入って寝るのが原則とされる。テレビを見たりして起きていると副作用が出やすくなる。
副作用の一つは筋肉に力が入りにくくなることだ。夜中にトイレに立った際、ふらついて転んだりする。
また、気持ちが高ぶったり、自分の行動を後で覚えていない「奇異作用」が起きることもある。いずれの場合も医師に相談し、薬の量や種類を調整してもらうのがよい。
薬をやめた夜、眠れないこともある。これは「反跳作用」と呼ばれる。例えば、手術などで入院し眠れずに睡眠薬をもらっていた患者が自宅に帰ってから表れる。たいてい、数日たてば自然に眠れるようになるが、やめる時には医師に相談するのが賢明だ。
■睡眠日記
布団に入った時刻、寝入った時刻、目覚めた時刻などを記録する「睡眠日記」を付ける治療法もある。すると「思ったより眠っていた」と気づく患者がいる。「眠れない」と訴えた高齢女性が、日記をつけ「夜早く寝て早朝に目覚めていただけでした」と話した例もあるという。
不眠でない人も、よく眠る工夫は欠かせない。厚生労働省の検討会が03年に公表した「快適な睡眠のための7箇条」=表参照=を参考にしたい。【高木昭午】
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■快適な睡眠のための7箇条(抜粋)
(1)快適な睡眠でいきいき健康生活
・定期的な運動習慣は熟睡をもたらす
・夜食はごく軽く
(2)睡眠は人それぞれ、日中元気はつらつが快適な睡眠のバロメーター
・自分にあった睡眠時間があり、8時間にこだわらない
(3)快適な睡眠は、自ら創(つく)り出す
・夕食後のカフェイン摂取は寝付きを悪くする
・睡眠薬代わりの寝酒は睡眠の質を悪くする
・自分にあった寝具の工夫
(4)眠る前に自分なりのリラックス法、眠ろうとする意気込みが頭をさえさせる
・軽い読書、音楽、香り、ストレッチなどでリラックス
・眠ろうと意気込むと逆効果
・ぬるめの入浴で寝付き良く
(5)目が覚めたら日光を取り入れて、体内時計をスイッチオン
・同じ時刻に毎日起床
・早起きが早寝に通じる
(6)午後の眠気をやりすごす
・短い昼寝でリフレッシュ
・昼寝をするなら午後3時前の20〜30分
(7)睡眠障害は、専門家に相談
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