2008年06月20日(金) 16時52分
「採血器具問題」で厚労省が対応に苦慮(医療介護CBニュース)
島根県内の医療機関が、同一の針による「微量採血用穿刺(せんし)器具」を複数の患者に使用していた問題で、厚生労働省は6月20日までに、各都道府県に対し当初は同日としていた調査結果の提出期限を30日まで延長することを決めた。都道府県あてに調査依頼した5月30日には、対象器具が24品目だったが、その後、31品目にまで増え、器具の販売開始時期もさらに6年以上さかのぼらなければならなくなったことなどから、調査に追われる都道府県が出ているためだ。中には、いつ販売が始まったかさえ特定できていない器具もあり、厚労省は対応に苦慮している。
【「微量採血のための穿刺器具について」詳細】
採血器具問題は今年4月、同県益田市の診療所が患者37人に同一の針による微量採血用穿刺器具を複数者使用していたことから発覚。因果関係は不明ながらも、うち21人がB型、C型肝炎ウイルスに感染した恐れがあると指摘されている。
同県の調査で、器具の「不適切な使用」は46の医療機関に上ることが判明したが、この診療所以外には、同一の針を複数の患者に使用した例はなかった。
事態を受けて、厚労省は5月30日、都道府県あてに6月20日を結果の提出期限とした調査を依頼。30日までに結果を集約し、「不適切な使用」が判明した医療機関名を公表することなどを検討していた。
調査の対象となったのは、3種類ある微量採血用穿刺器具のうち、「針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないもの」=図参照。主に糖尿病患者が血糖値を測定するため指先から採血する際に使う器具で、針を交換しても、その周辺に付着する血液を通じたウイルス感染が否定できないため、複数の患者への使用が不可となっている。
この器具については、英国の医薬品庁が2005年11月、介護施設で2人が死亡するB型肝炎の発生が疑われると発表。英国で医療・介護従事者に注意喚起されたほか、カナダの保健省も06年1月、同様の注意を促している。
こうした海外での事例を踏まえ、厚労省は同年3月までに、器具の製造・販売業者に「複数患者使用不可」のシールを張り付けることなどを指導するとともに、各都道府県にも「複数の患者に使用しないよう特段の注意を払うこと」などと注意喚起していた。
厚労省が全国調査に乗り出した5月30日には、対象器具が24品目で、販売開始時期の最も早いものは1997年4月だった。しかし、その後、対象品目が31品目に増え、追加された7品目のうち分かっているだけでも、最も販売開始の早いものが91年1月だったため、都道府県は調査の範囲を大幅に広げなければならなくなった。しかも、7品目のうち2品目の販売開始時期が不明であることなどから、都道府県は調査に手間取っているもようだ。
調査は、病院や診療所、介護老人保健施設などの医療・介護関連機関(施設)で使用された場合を中心にしているが、企業や地域で実施された健康教室や健康フェスタなどイベントでの使用も含んでいる。イベントでは、どのくらいの参加者がいて、器具がどう使用されたかの実態をつかみにくく、具体的な調査を難しくしているとみられる。
厚労省によると、6月20日までの調査では、島根県の1事例を除き、同一の針を使用していたケースはないという。また、日本では、これまでに採血器具を原因とするB型肝炎などの感染症が発生したという事例は報告されていない。
厚労省は今後、30日まで提出期限を延長した都道府県の調査結果を精査して、情報公開することにしている。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080620-00000002-cbn-soci