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2008年06月20日(金) 19時21分

焦点:三井住友とバークレイズ提携、狙いはアフリカ・中東ロイター

 [東京 20日 ロイター] 三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>が英銀大手のバークレイズ<BARC.L>に約1000億円出資し、業務提携を結ぶ方向で最終調整に入った。
 三井住友FGはバークレイズの誇るアフリカや中東地域でのネットワークを通じ、新しい顧客層を獲得して融資や投資機会を効率的に獲得することを目指す。
 サブプライム(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題で自己資本がき損している米欧金融機関に対し、出資という対価を支払って提携による果実を得ようという邦銀にとって初の「戦略提携」が姿を現した。ただ、出資比率は1—3%程度にとどまり、収益効果をどの程度見込むことができるかは現段階で不透明だ。
 <三井住友は純投資でなく戦略投資を志向>
 三井住友FGは昨年後半から、サブプライム関連損失に苦しむ欧米金融機関に出資することができるか、複数の相手先と折衝してきた。ただ、出資してリターンを得る純投資ではなく、戦略的投資に結びつけることを狙ってきた。
 みずほフィナンシャルグループ<8411.T>が今年1月、米投資銀行大手メリルリンチ<MER.N>に12億ドル(約1300億円)を出資した際、三井住友銀幹部は「配当収入狙いの純投資に資金を回す余裕はない。国際的なビジネス展開に結びつく戦略投資でなければ意味がない」と語り、みずほの戦略とは距離を置いた。
 みずほの出資は、メリルによる総額66億ドル(約7100億円)の増資の一部で、業務提携は両社の合意に盛り込まれていない。三井住友の出資もバークレイズが実施する総額40億ポンド(約8400億円)規模の増資の一部を引き受けるかたちだが、純投資に限定したみずほに対し、三井住友は戦略投資を狙っている点が異なる。
 預金超過という構造的な問題を抱えながら、国内で伸び悩む資金利益が収益の柱になっている邦銀は、各行とも新しい収益源を見つけることが大きな経営課題になっている。2%前後の低成長が続く日本経済の伸びを超える成長戦略を描くには、国際業務の強化が不可欠だ。中でも三井住友は、みずほフィナンシャルグループや三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>との比較で、海外ビジネス分野での出遅れが目立つ。07年度の国際部門の粗利益は三菱UFJが3051億円、みずほのが1784億円だったのに対し、、三井住友は1375億円にとどまった。今回の投資は、国際業務巻き返しの一歩になる可能性がある。
 <手薄な中東・アフリカで商機拡大の期待>
 関係者によると、三井住友が狙う業務提携の主眼は、バークレイズが持つアフリカや中東の顧客基盤。バークレイズは英国4大銀行の一角で、国内ではリテールやカード業務などの商業銀行業務に強みがある。一方で、大英帝国がかつて中東やアフリカで植民地を経営していたという歴史的経緯もあり、ロンドンに根拠地をもつバークレイズは、その地域に確固としたネットワークを保持している。金やダイアモンドなどの地下資源を豊富にもつ南アフリカで最大のリテールバンク・Absaグループ<ASAJ.J> も傘下だ。
 オイルマネーの流入で建設ブームとなっている中東地域のビジネス拡大に、三井住友も業務拡大のための投資を本格化させている。ただ、銀行業務を急速に拡充させることは難しく、初期投資を始めたばかりといえる。南アフリカをはじめその他のアフリカ諸国には、地下資源の豊富さなどから欧米の金融機関が投資を積極化させてきたが、三井住友をはじめ邦銀はほとんど手付かずの状態だった。三井住友関係者は「バークレイズの裏側に広がっている中東やアフリカのマーケットは大変魅力的。バークレイズに水先案内人の役割も期待したい」と、今回の業務提携の狙いを話す。
 <ゴールドマン・サックスとの関係もクリア>
 これまで三井住友が海外金融機関との提携に動きにくかった背景には、ゴールドマン・サックス(GS)との提携関係の存在もあった。GSは2003年、三井住友FGの優先株増資1500億円を引き受け、合わせて不良債権処理などで業務提携を結んだ。現在、GSが保有する優先株は簿価で1000億円程度まで減少したものの、業務提携関係は継続中。「株式関連業務で他の金融機関と提携するわけにはいかない」(関係者)という。
 これに対してバークレイズは、グループに投資銀行部門を持つものの株式業務はほとんど行っておらず「GSとの関係を維持することができる」(同)点も決め手になった。
 <出資先としての期待高まる邦銀>
 「今やメガバンクの企画部には、欧米金融機関からの出資要請の提案書が山のように舞い込んでいる」——。大手証券会社幹部は、こう打ち明ける。昨年から続く欧米金融機関の増資ラッシュには、豊富な資金力を誇るソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)が最大の出し手となって対応してきた。しかし、底の見えない証券化商品関連損失の拡大で、終わったはずの処理に追われる欧米金融機関の姿に、豊富な資金量を持つSWFも「簡単には資金を出さなくなってきた」(外資系証券幹部)という。
 最近の米欧金融株の下落で、すでに出資した部分の含み損が、かなりの規模に上っていることもSWFに二の足を踏ませる要因にもなっている。このためサブプライム問題での損失が相対的に軽微な邦銀に対し、次の資金の出し手としての期待感も高まってきている。交渉に臨む邦銀勢のポジションは、半年前に比べかなり有利になってきているとの見方も一部で出ている。
 ある大手銀行幹部は、欧米金融機関への出資について「まだまだあせる必要はない」と指摘。今後の米欧金融機関の対応やクレジット市場の動向などマーケットの行方をみながら慎重に対応しても、不利にならないとの感触を示している。
 (ロイター日本語ニュース 布施 太郎記者 取材協力 江本 恵美記者 編集 田巻 一彦)

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