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2008年06月19日(木) 12時22分

相談者との関係を明確にし、探偵に事情を聞く〜市民記者が検証した「探偵の仕事」(3)オーマイニュース

 私は探偵業を営むものではないのでフリーライターとして調査をすることにした。そして3月5日、電話で男性(夫)に次のことを伝えた。

(1)私は探偵業を営むものではないので報酬は要らない

(2)男性は私に必要な情報を提供し、調査には一切口を出さないでほしい

(3)不正アクセス防止法を含め、いかなる違法な調査もしない。男性も妻のPCや携帯のクラックを試みない

(4)男性とその家族を含め個人が特定される情報は出さないことを条件に、オーマイニュースの記事にする

(5)経費はかけられないし人員を割けない。代わりに時間をかけるため半年ないしは1年の単位で考えてほしい

 次に、当事者として件の探偵にアポイントを取り、3月7に大阪府内の事務所を訪ね、話を聞いた。留意したことは決して問い詰めないこと、問い詰める姿勢では本音は引き出せないからである。

 探偵の主張は次のようなものであった。

 依頼者(男性)は被調査人(妻)とテニスインストラクターとの不貞を疑っており、平日の午後から夜8時までの尾行を強く要望。その要望に応える。しかし、妻はテニスの後、女性同士や時にはインストラクターを含めて食事やお茶をしていたが、インストラクターとの個人的接触はおろか、ほかの男性との接触もは 11月26日から年内いっぱいなかった。

 私(探偵)から1月の調査を中止する旨を申し入れたが、納得してもらえず。1月も調査したことにしてしまった。

 元探偵としては、気持ちは分からないでもない。ある程度の経験を積めば、現在の調査を続けても真相がつかめないことは容易に想像がつく。この探偵は悪意に満ちた人格ではないことは分かった。しかし、やっていない調査で金を取ることは、やってはならないことだ。

 本件の場合、依頼者の思い込みに振り回されている可能性が非常に高い。そこで私は、探偵業の名誉と今後の業界改善のため真相を明らかにすることを探偵に提案し、市民記者という立場で真相を究明したい旨を申し入れた。また、協力なき場合は、私の検証のみに基づいて記事を書くため、探偵の弁解が入る余地がないことと、取材協力者ないしは情報提供者に該当しないため、探偵の屋号と実名も書くことになることを伝えた。

 すると探偵は、私に調査資料を見せるわけにはいかないが、調査資料をすべて依頼者男性に送付することを約束した。

 さらに次のことを聞いてみた。

──—被調査人(妻)の携帯を含めたメールに関してどのように解釈しているのか?

 「出会い系サイトを介したネット恋愛。遠距離の付き合いでおそらく不貞関係はないだろう。あればクリスマス前後に会っているはず」

──—その検証は行ったのか?

 「不正アクセス禁止法に触れるため、行っていない」

──—夫がネットワーク管理者である場合、ネットワークの監視は可能であるが、それは行ったか?

 「行っていない」

──—妻の携帯の契約者が夫である場合、携帯に届いたメールをWebに転送可能であるが、それを確認したか。

 「倫理的に確認も行っていない」

 ここで「倫理」を持ち出すとは意外だと思った。そして探偵の真摯(しんし)な話を聞くうちに、探偵の言うように男性(夫)が思っているような不貞関係はないのではないかと思うようになった。

 また、週に3回も会っているとするならば、夫に疑われつつパスワードをかけたりWebメールを利用したりして頻繁にメールで連絡を取り合う必要もない。

 テニスのインストラクターをいったん対象から外して、仮説を立て直す必要を感じた。

〈全8回、つづく〉

(記者:湯浅 秀昭)

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