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2008年06月18日(水) 11時34分

セックスワークの「プロ/アマ・ボーダレス」化現象オーマイニュース

 セックスワーカーのエイズ対策について調査している厚生労働省の研究班(主任研究員、東優子・大阪府立大学准教授)がこのほど、『日本の性娯楽施設・産業に係わる人々への支援・予防対策の開発に関する学術研究』をまとめた。

 同研究は2006年度に始まり、今回(2007年度)が2回目。

 今回は、セックスワーカーではなく、一般女性における金銭が介在する性行為について、国内で初めて調査した。

 東准教授によると、「セックスワーカーのアイデンティティを持たずに、金銭授受を伴う性行為をする女性がおり、素人/玄人のボーダレス化現象がある。そうした女性たちの調査研究は、いままでは高校生以外の調査がなかった」。

 なお、記者(=渋井)は、2007年度から同研究班で研究協力者として参加している。

 調査方法は携帯電話のWebアンケートで、2007年12月7日から11日までの5日間、スクリーニング調査を行い、性交経験がある者で、協力に同意があった18歳から29歳の女性2264人が回答した(配信数からの参加率87.1%)。

■14%が、金銭授受ありの性行為

 「金銭の授受ありの関係」の詳細については、以下のような回答状況だった(複数回答、以下いずれの数値も)。

・性的なことはしなかったが、男性との食事やカラオケなどにつきあい、お金を受け取った=8%
・自分の性器を触らせたりする行為(挿入なし)をして、お金を受け取った=5.7%
・男性の性器を触ったりする行為(挿入なし)をして、お金を受け取った=6.6%
・セックスをしてお金を受け取った=11.8%

 このうち、後半の3つの行為の範囲を性行為としてくくると、14.2%が「金銭授受ありの性行為」の経験者だった。

 「高校生の調査では、援助交際の経験は4%ほどだが、今回の調査は年齢層が広いので、経験者の率も高くなった。ただし、調査対象が携帯電話のアンケートに協力的な層なので、この数字が一般的な傾向かどうかはわからない」(東准教授)

 「金銭授受あり性行為」の経験者が相手と知り合った手段は、

・出会い系サイト=62.3%
・ナンパ=26.2%
・テレクラ・伝言ダイヤル=19.6%
・性風俗店での勤務時間外で客との関係=13.1%
・以前からの知り合い=12.5%

 「金銭授受ありの性行為の経験がある女性は、携帯電話の利用を通じてだろうと想定して調査に臨んだ。したがって出会い系サイトの利用が多いのは、その想定を追従している」(東准教授)

■信頼関係があるほど、感染リスクは高くなる

 事前に確認することとしては、

・受け取る金額=63.9%
・割り切った関係であること=52.3%
・セックスの時のコンドームを使うこと=48.6%

という状況で、避妊についての確認は、半数前後にとどまった。

 金銭授受ありの性行為を通じて、なんらかの「不快な経験」をしたのは77.3%。具体的には

・自分の中で背心的苦痛が残った=33.6%
・コンドームを使いたかったのに、使わずにセックスをした=23.1%

などが多く、このほかに妊娠の心配や、性感染症(STD)の症状も2割いた。

 一方、「金銭授受のない性行為」については、96.2%が経験していた。興味深いのは、「不快な経験」をした人の割合が83.7%と、「金銭授受ありの性行為」の経験者よりも高かったこと。内訳は、

・妊娠したかもしれない=68.8%
・STDの症状=30.4%
・コンドームを使いたかったのに、使わずにセックスをした=30.3%

 いずれも「金銭授受ありの性行為」よりも割合が多く、金銭授受ありの性行動と比べてコンドームを使わないセックスが行われ、結果として妊娠の不安やSTDの症状があらわれている、といった結果になった。

 「セックスワーカーや不特定多数が相手のセックスは危ないというイメージがあるが、実際には逆。つまり、恋人関係で信頼関係が高まれば、コンドームを使用する率が下がることは以前からも言われていた。女性はたった1人の男性から感染することのほうが多い。また、セックスの経験が高ければ高いほど、コンドームの使用率が下がるとも言われている。今年度はリスク認知やその対処の実態を調査していく」(東准教授)

  ◇

 厚生労働省のエイズ動向委員会によると、HIV感染者の報告数は2007年、1082件で過去最高になった(前年は952件)。うち日本国籍のケースは969件で、男性が931件、前年よりも144件増。日本国籍の女性は38件で11件少なくなった。

 一方、AIDS患者の報告数は前年比12件増の418件。日本国籍のケースは365件で、男性は343件で、8件増加。日本国籍女性は22件で、2件増えた。

(記者:渋井 哲也)

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