12日発表された米ヤフーと米グーグルの提携は、インターネット業界の大物同士が手を結び、共通のライバルである米マイクロソフト(MS)を追い落としたい思惑が反映している。
MSとの買収・提携交渉を打ち切ったヤフーはMSに代わる収益向上策を示すことになり、グーグルはネット事業での独走態勢を固められるメリットがある。ただ、米反トラスト法(独占禁止法)への抵触、MSへの売却を希望したヤフー株主の反発など「強者連合」実現には曲折も予想される。(ニューヨーク 池松洋)
両社の検索シェア8割「検索事業の収益力を強化できる」。ヤフーのジェリー・ヤン最高経営責任者(CEO)は12日、グーグルとの提携メリットを強調した。米国での両社合計のネット検索シェアは8割以上、サイトの利用者数もMSを大幅に上回る。
ヤフーはスケールメリットを生かし、検索結果を表示する自社サイトにグーグルの広告を表示することなどで年8億ドル(約850億円)の増収効果が見込めると説明する。
ヤフーの2007年12月期の売上高は69億ドル。提携で売上高は1割以上も膨らむ。2年連続の減益に苦しむヤフーとしては株主にも「MSと組むよりメリットがある」とアピールできると判断した模様だ。
提携期間は最長10年。ヤフーが買収された場合は提携は解消、ヤフーが2億5000万ドルの違約金を支払う条項も盛り込み、買収防衛策の側面もある。
グーグルはヤフーを自陣営に取り込むことでMSによる追撃の芽を摘み取ることに成功した。市場では「ヤフーはグーグルへの依存度を強め、長期的には競争力が低下する」(米アナリスト)として今回の提携がグーグル独走にさらに拍車をかける可能性も指摘されている。
ネット事業の再建窮地一方、MSにとっては、今年2月以来4か月半に及んだ交渉が結果的にグーグル・ヤフー提携の呼び水になるという最悪の結果となった。
MSの米検索シェアは低下に歯止めがかからない状態だ。4月は9・1%とグーグルの7分の1程度まで落ち込んだ。MSは今後、ヤフー以外のネット企業の買収や提携を模索すると見られる。しかし、ヤフー以上の有力企業は見当たらず、ネット事業の立て直しは窮地に追い込まれたと言える。
提携が実現できるかどうか課題もある。カギを握るのが独占禁止法だ。グーグルとヤフーは独禁法に抵触しないように資本関係を結ばず、両社以外にも提携の門戸を開いた。提携地域を北米に限定したのも強硬姿勢で知られる欧州委員会の介入を防ぐ狙いがある。
だが、米上院反トラスト小委員会が早くも両社の提携を調査する方針を発表するなど両社の思惑通りに進むか不透明だ。
ヤフー株主の反応も不確定要因だ。MSへの売却を求めてヤフー経営陣の入れ替えを求めた米著名投資家カール・アイカーン氏らが交渉決裂に反発を強める可能性もある。8月1日の株主総会まで予断を許さない情勢と言えそうだ。