17人が死傷した東京・秋葉原の無差別殺傷事件から15日で1週間が過ぎた。
事件当日にその場に居合わせ、けが人の応急処置にあたった埼玉県在住の樋口信也さん(35)はこの日、現場を訪れ、献花台の前で手を合わせた。
「まるで昨日のことのように感じる」
1週間前、買い物に訪れ、路地を曲がった樋口さんの目に飛び込んできたのは、路上にうつぶせで倒れた女性と、警察官に取り押さえられた加藤智大(ともひろ)容疑者(25)の姿だった。女性の衣服は血に染まり、脈拍も弱まっていた。
傷口に布を当てて止血しながら、警察官に連行される加藤容疑者の顔を見た。焦点の定まらない目、脱力したような表情。だが「どこにでもいる普通の若者にも見えた」とも振り返る。
報道などで加藤容疑者について知るにつれ、怒りとやりきれなさを感じる。「社会とのコミュニケーションがうまくとれず、疎外感を募らせていったのかもしれない。でも、完璧に幸せな人間なんていないのに」
先日、救助した女性が回復していると東京消防庁から連絡を受けた。「改めて、身勝手な犯行で大切な人を傷つけられたり失ったりした人々を思い、憤りで一杯になった」と話す。
この日は、事件を受け、35年間続いた歩行者天国が初めて中止となった日曜日。車の行き交う交差点を見ながら樋口さんは「事件の印象が強くて、違う場所に見えるのが寂しい」と話した。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080608-2810266/news/20080615-OYT1T00560.htm