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2008年06月14日(土) 00時00分

(8)雑談からグッズ開発読売新聞

太宰風のマントを着たガイドの小谷野芳文さん

 太宰治のファッションといえば、長身に羽織る黒いマント。6月19日の桜桃忌には、「とんび」と呼ばれるこのマント姿で、太宰の墓に現れる“なりきり”ファンもいる。三鷹市では、廃れてしまったとんびを、再びはやらせようという計画がひそかに進んでいる。

 市職員や市民団体で「太宰プロジェクト」が結成されたのは昨年6月のこと。堅苦しい会ではない。太宰を中心に観光振興を図ろうと、アイデアを自由に出し合う、いわば雑談会。とんびに目を付けたのは副市長の河村孝さん(54)だ。

 「ガイドが着て歩けば、街の人にも太宰に親しみを持ってもらえるのでは」

桜桃忌から販売が始まる一筆せんや絵はがき

 さっそく「みたか都市観光協会」が、太宰風とんびを10着購(あがな)った。観光ガイドが4月のイベントで試着すると、カメラを下げた市民に「玉川上水の脇を歩いて下さい」と声をかけられて人気だった。伊勢丹によると、とんびは年間30着程度、売れているという。

 「形」から入る太宰。プロジェクトでは、三鷹を訪れる太宰ファンに販売するグッズも検討された。

 河村さんは、あえて“大胆な”Tシャツの販売を提案した。胸には大きなゴシック文字で「人間失格」、背中はわびしい筆遣いで「生れてすみません」。「若者にはこれくらいの衝撃が必要だ」と主張したが、これは残念ながらお蔵入り。

 実際に今年の桜桃忌から売り出されるのは、絵はがきセット(500円)や太宰のシルエットが入った一筆せん(400円)など。3月にオープンした「太宰治文学サロン」で販売することになっている。

 太宰もよく、手紙を書いた。山梨県立文学館では、「富嶽百景」に「放屁(ほうひ)なされた」などと名前を出して書いた井伏鱒二へのわび状を展示中。三鷹のサロンでは、税務署に税金の減免を哀訴する手紙が読める。

 新グッズは、もっと格好いい手紙に使ってもらいたいですよね、太宰さん。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231212425875707_02/news/20080617-OYT8T00677.htm