14日午前に発生した岩手・宮城内陸地震について、気象庁は同日午前8時43分55秒、陸地の強い揺れの到達を予測する緊急地震速報を発表した。
昨年10月からの本格運用以来、3度目の発表となったが、震源が陸域内部で深さ約8キロ・メートルと浅い直下型地震だったため、震度6クラスの揺れがあった震源付近の岩手県南部などでは、速報は揺れ始めた数秒後に出され、速報の技術的な限界が浮き彫りになった。
発表が間に合わなかったのは、震源から半径約30キロ・メートルの範囲。同庁は一般向けに、岩手県が震源のマグニチュード(M)6・1、最大震度5強程度の揺れが発生すると発表。その後、44分12秒にM6・9、最大震度6強という第2報を出した。
第1報のマグニチュードと震度の見積もりが小さかったことについて、同庁地震津波監視課では「地震波の観測点が少なく、精度が十分でなかったため」としている。緊急地震速報は、地震発生に弱い揺れをもたらすP波と強い揺れをもたらすS波の地盤を伝わる速度の差を利用して地震の規模、震度を予測するもので、昨年10月から一般向けの情報提供が始まった。
◆震源から100キロ、仙台は5秒前に受信
今回の地震では、震源付近の弱い揺れの観測から4秒後に、気象庁は「震度5強、マグニチュード6・1」とする一般向けの緊急地震速報を発表し、テレビなどで流された。
震源付近では間に合わなかったが、震源から約40キロ以上離れた地域では、発生から4秒後以降に揺れが到達しており、強い揺れの前に緊急地震速報が間に合い、被害軽減に役立つケースもあった。
震源から約100キロ離れ、最大で震度5強を観測した仙台市では、市営地下鉄南北線で揺れの5秒前に緊急地震速報を受信。この速報に連動する緊急停止信号が、当時運行中だった上下線の電車11本に流れ、揺れが来る前に自動停止装置が働いた。けが人はなかった。市交通局の庄子清治営業課長は、「5秒ですぐ止まるわけではないが、揺れが来る前にスピードを緩めるだけでも、危険性は低くなる。非常に役立ったと思う」と評価した。
約120キロ離れた、山形市の国立病院機構山形病院では、事務局にいる日直の職員がテレビで緊急地震速報が流れているのを知り、職員が病棟にかけつけ、患者の使用している呼吸器の異常がないか確認を行った。病院職員は「最初は何が起きたのかよく分からなかったが、速報で大きな地震が起きるということが分かった」と話した。
気象庁地震津波監視課の横田崇課長は「震源の真上から半径30〜50キロぐらいの範囲では間に合わないが、その外では揺れが到達する数秒前に速報を発表できた。本来の機能が発揮できたのではないか」と語った。
一方、震源に近い岩手県奥州市の千葉勝子さん(51)は、「外に避難しようかと家族で話し始めたときにテレビにテロップが出た。あまり役に立たなかった」と話す。同県一関市内の特別養護老人ホームでは、朝食を終えた入所者らがリビングや部屋でくつろいでいる中、職員の一人がテレビの地震速報を見たというが、対応策はとれなかったという。この施設ではけが人などはなかった。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080614-2892868/news/20080614-OYT1T00458.htm