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2008年06月14日(土) 15時25分

「体が宙に浮いた」 土曜の朝襲った揺れ、死傷者100人超中国新聞

 土曜日の朝、強い揺れが東北地方を襲った。岩手県奥州市などで震度6強を記録した岩手・宮城内陸地震。「体が宙に浮いた」「窓を開け、しがみついた」。保育所ではガラスが割れ、園児は頭から血を流し泣き叫んだ。バスが谷底に転落したとの情報も。三人が死亡し、けが人は百人超。家屋倒壊や土砂崩れが相次ぎ、停電や断水も広範囲に及んだ。被害はどこまで広がるのか。

 ▽ドンと下から突き上げ

 ドンと下から突き上げられるような縦揺れの後、横への揺さぶりがしばらく続いた。十四日朝、東北地方を襲った地震。各地で家屋倒壊や落石、土砂崩れによるけが人が続出、死者も出た。「署員を総動員しても情報を集約しきれない。とにかく人が足りない」。被災地の警察署では怒号のような声が飛び交った。

 震度6弱を観測した宮城県大崎市の主婦(52)は「ガタガタと大きな音がしてすごい揺れだった。窓を開けて、そのまましがみついていた」と恐怖の瞬間を振り返った。

 主婦の自宅では戸棚の引き出しが飛び出したり、テレビ台が動くなどしたが、揺れの割には被害は少なかったという。「夫の両親に電話がつながらず、夫が確認に向かっている。無事でいてほしい」と話した。

 宮城県栗原市の築館署当直責任者は「あちこちで土砂崩れが起きたり道路が寸断されたりしているという情報が入ってくる。まだ現場に近づけず、確認できていない」と緊迫した様子。「管内は山道が多いので、土砂崩れなどの被害はさらに広がるだろう」。受話器の向こうでは電話が鳴りっぱなしだ。

 栗原市役所では男性職員が「強い縦揺れが三十秒ぐらい続き、その後横揺れが一分続いた」と慌てた様子。女性職員は、発生から約十分後に「今も余震が続いています」と不安そうに話した。

 仙台から東京へ向かう東北新幹線は、上野駅手前の線路上で一時間弱にわたり停止。ほぼ全線で運転をストップするとの車内放送が流れ、はやて、やまびこなどが線路上で立ち往生したという。車内では携帯電話で連絡を取る乗客が相次いだ。

 岩手県一関市のダム近くの国道342号では数カ所でがけ崩れが発生。地元消防の団員は「がけ崩れは幅七十メートルという情報もあるが、まだよく分からない」と情報収集に追われた。

 岩手県警釜石署では署員約三十人が当直の引き継ぎの最中。横揺れがしばらく続き「ウオー」というどよめきが起きた。当直責任者は「腰を低くして周囲を見回したり、机につかまったりする署員がいた。私は立っていたが、よろめくほどではなかった」と話した。

 ▽「バス転落」緊張の被災地

 震度6強を観測した岩手県奥州市ではバスの乗客十七人が谷底に転落したとの通報があった。ダム工事中の作業員が落石で重体になり、救助活動が続く。道路の舗装はめくれ上がり、住民は「体が宙に浮いたような、強烈な揺れだった」と話した。

 奥州市内の消防署に勤める小野寺俊男さん(58)は地震が起きた時、農作業をしていた。「立ち木がゆさゆさと揺れ立っているのがやっと」。すぐ職場に駆けつけると、乗客十七人が乗ったバスが転落したとの一報が入っていた。

 「転落したのは五十メートル下の谷底」「土砂に埋まっている」。次々と情報が入り緊張が高まった。

 JR水沢駅から車で約十五分の胆沢ダムでは、工事中の作業員が落石に遭った。「救急車が現場に向かったまま、まだ搬出されてこない」とダム事務所職員。

 奥州市のコテージ従業員の女性(44)は朝食の後片付け中だった。「突然硬いものでドンドンドンと突き上げられる感じで、家具が倒れ食器も全部割れた」

 「異常に強い横揺れで、庭の池の水が半分以上、外にあふれ出した」。奥州市役所胆沢総合支所の男性職員も職場へ急行。「庁内は防火扉があちこちで閉まった。床や廊下はキャビネットから落ちたパソコン、資料などで埋まっており、それをかき分けながら歩いている状態」と慌ただしく話した。

 ▽血流し、泣き叫ぶ園児

 頭から血を流し、泣き叫ぶ園児。「怖い」「痛い」。地震で大きな被害が出た岩手県奥州市の市立玉里保育所ではホールの窓ガラスが割れ、子どもら計七人が破片で頭を切るなどのけがをした。子どもらの泣き声が響き騒然とする中、保育士らは手当てに追われた。

 保育士の菅野淳子さん(33)は、二人の男児を迎えに玄関に向かったところ、突然、大きな揺れを感じた。「どんなふうに揺れたのか覚えてない」。菅野さんは夢中で、近くにいた二人の子どもを腕に抱えかばった。

 「バーン」。その瞬間、背後でガラスが割れる大きな音がした。振り返ると、ホールのドアの上部にはめ込まれた窓ガラス四枚のうち三枚が落下。ホールの中で遊んでいた五歳の男児が、頭や左目の上を破片で切り、血を流しながら泣き叫んでいた。床には割れたガラス片が散らばっていた。

 菅野さんによると、ほかに二—五歳の男児五人、女性保育士一人がガラス片で足を切るなどけがをした。「怖い」とおびえる子どもらを安全な場所に避難させ、保育士らはけがをした子どもらの手当てに追われた。

【写真説明】ダム周辺の土砂崩れ現場で救助活動をする救急隊員=14日午後0時56分、岩手県奥州市で共同通信社ヘリから

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200806140431.html