2008年06月13日(金) 14時07分
2010年サッカーW杯南アフリカ大会に開催の危機?(ダイヤモンド・オンライン)
南アフリカ共和国の次期大統領選挙の結果によっては、2010年のサッカーワールドカップ(W杯)の開催が危ぶまれる可能性がある。サッカーファンには聞き捨てならない話だろう。しかし、それは単なる杞憂ではない。
原因は次期大統領選挙を巡る混迷にある。
経済成長を実現したムベキ現大統領は国際社会から評価を得ているが、自国民からの受けは最悪だ。成長を重視するあまり、黒人の貧困層への対策がおろそかになり格差が拡大したとされているのだ。
このムベキ大統領は2009年、2期10年の任期を満了する。そして次期大統領の最右翼とされているのがズマ氏だ。
ズマ氏はムベキ大統領と違い、国民から大人気だ。経済学者でもあるムベキ大統領がインテリのイメージであるのに対し、ズマ氏は具体的な政策はないが、リップサービスが得意な大衆政治家だ。国民に格差是正を約束し、カリスマ性もある。
南アフリカの大統領は最大与党であるアフリカ民族会議(ANC)の党首が就任する。ズマ氏は2007年12月に行われた党首選で勝利しているため、このまま大統領になる可能性が高い。
しかし、ズマ氏にはHIVに感染した女性をレイプした疑惑(裁判では無罪)や軍需企業から賄賂を受け取った疑惑などがあり、ノーベル平和賞を受賞したツツ元主教をはじめ、南アフリカ政財界の指導者層の多くはズマ氏の大統領就任を快く思っていない。2005年には、さまざまな疑惑から副大統領を解任されており、汚職疑惑の今後の捜査によっては逮捕の可能性もささやかれている。
政策面では、ズマ氏はムベキ路線を継続すると見られているが、仮に自分をないがしろにするANC幹部など指導層を排斥するとなると、政治は混迷し南アフリカの行く末には暗雲が漂う。
このままでは経済が失速し、現状でも停電が頻発している貧弱なインフラの整備はさらに遅れるかもしれない。また、南アフリカには非常に危険な地域があり決して治安はよくない。しかも今年初めには、警察組織のトップである警察長官が犯罪組織から賄賂を受け取った疑惑で更迭されるなど取締り体制も心もとない。
2年後のW杯開催に向けて、本来なら早急に治安やインフラの改善に手を打たなければならないのだ。政治の混迷が続けば、W杯運営への影響は必至で、場合によっては開催も危ぶまれるところだ。
W杯の出場権をかけてサッカー日本代表の熱戦が続くが、世界のサッカー関係者は、南アフリカの次期大統領選にも注目する必要がありそうだ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介)
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