2008年06月12日(木) 11時56分
日雇い派遣グッドウィルに逮捕者、その影響は?〜本間俊典コラム(オーマイニュース)
日雇い派遣最大手、グッドウィルの中堅幹部3人が二重派遣をしていたとして、6月3日、警視庁保安課に逮捕された。派遣業の免許を持たない東和リースという会社に派遣労働者を送り込み、東和リースがさらに別の港湾運送会社に派遣した疑いだ。
東和リースは無免許派遣のうえ、労働者派遣法で禁止されている港湾運送業務に労働者を送り込んでいた。グッドウィルはそれを知りながら、東和リースと契約していた疑いだ。
二重派遣の横行は業界では常識。メーカーなどから家電量販店に送り込まれる「ヘルパー」問題も同じ構造にある。一部は裁判にもなり、実態が露呈していた。
厚生労働省もかねて、二重派遣や偽装請負の禁止を派遣元や派遣先企業に強く要請し、撲滅キャンペーンを張るなどしてきたが、なかなか効果は上がらなかった。
その象徴が、日雇い派遣大手のグッドウィルとフルキャストだった。
厚労省は両社に相次ぎ行政処分を下し、それを受けた警視庁が今年1月、グッドウィルに対して家宅捜索を実施、逮捕者の出るのは時間の問題とみられていた。
ここまで来ると、当然ながら「日雇い派遣会社は諸悪の根源。法律で禁止すべきだ」という意見が出てきてもおかしくない。事実、連合や民主党など組合側を中心に日雇い禁止の法改正案が出たし、それに賛成する有識者も少なくなかった。
しかし、結局は見送りとなった。国会情勢がそれどころではなくなったうえ、野党間の調整が進まず、民主党案だけでは法改正は不可能だからだ。
さらに、日雇い派遣を禁止すると、今度は別のさまざまな問題が起こる可能性が高い。
一つは、労働市場の自由化を定めたILO条約に明確に違反することになり、日雇い派遣あるいは登録派遣だけの禁止は国際法のうえで問題になる。
「パート型派遣」もダメに!?
もう一つは、さらに現実的な問題で、実際に日雇い派遣で働かなければならない人が多数いるということだ。
日雇い派遣と聞くと、どこかの工場や倉庫などで荷物の積み下ろしなどの作業をして日当をもらう「その日暮らし」のワーキングプアを思い浮かべるのが一般的であろう。
しかし、それだけではない。事務系でも週末だけ、あるいは1日4時間だけといった就業条件が限定された「パート型派遣」も増えており、就業構造は日雇い派遣と同じ。子育て中の主婦で、独身時代にならしたスキルを発揮するケースが多く、日雇い派遣を禁止したら、こうした人たちも仕事を失ってしまいかねないのだ。
やはり、法改正ではなく、業界の自主規制や個別企業の法令順守の努力などに任せるべき問題であろう。
事実、厚労省が今年4月に出した改正省令で、1日単位の派遣契約をしないよう業界指導したところ、かなりの効果を上げている。「一律禁止」といった過剰な規制は、かえって働く人の利益を損なうこともある。
(記者:本間 俊典)
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