理不尽な凶行に、7人の命が奪われた東京・秋葉原の無差別殺傷事件。発生から4日目となった11日、各地で犠牲者の通夜が行われ、家族や友人、学生時代の恩師らが冥福(めいふく)を祈った。
突然の別れ、犠牲者の無念──。参列者はたくさんの思い出とやり切れない思いを胸に、笑顔の遺影を前にしてこらえきれず涙をこぼした。
「なぜ、巻き込まれなければならなかったのか」
東京芸術大4年の武藤舞さん(21)の通夜が行われた東京都台東区の寺。武藤さんの大学の友人らが弦楽器を演奏する中、参列者は祭壇に掲げられた笑顔の武藤さんの遺影に白いカーネーションを献花した。
すすり泣きながら友人に肩を抱えられた女性や、目を赤くして出てくる男性の姿も。
武藤さんは、毎年秋に北区で開かれる音楽祭の運営ボランティアもしていた。同区の経営コンサルタント佐藤盛寿さん(58)は、「昨年の音楽祭では、司会を務めてもらった。何事にも積極的な子だったのに」と唇をかんだ。
小学6年に理科を教えたさいたま市の元教諭、増岡隆宏さん(69)は「頭脳明晰(めいせき)な子だった」と振り返った。クラスみんなで一緒にサクラソウを育てていた姿が印象に残っている。
「12日の告別式では、サクラソウの種をひつぎに入れて、『天国で幸せになって』と祈りながら送ってあげたい」と語った。
ゲーム好きで、その腕前から「世界の宮本」と呼ばれていた会社員の宮本直樹さん(31)。さいたま市の斎場で営まれた通夜には300人以上が参列。父親の惇彦さん(60)は「犯人にますます憤りを感じています」と唇をかみしめた。
専門学校で同級生だった横浜市の秋山茂さん(30)は、「ゲームに熱中している姿を今でも思い出す。5年ぶりの再会がこんな形になってしまうとは……」。
東京情報大2年、川口隆裕さん(19)の通夜は、千葉県流山市の葬儀場で営まれた。川口さんの父、健さん(53)は「19歳で命を奪われて、本当に残念でならない。このようなことが二度と起こらないようにしてほしい」などと語った。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080608-2810266/news/20080611-OYT1T00819.htm