米アップルは、携帯電話機「iPhone(アイフォーン)」の新型モデル「アイフォーン・3G」を7月11日に発売すると9日発表した。
日本を含む22か国で同時発売される新型モデルは、高機能に加え、価格が現行型の半額程度と、国内の競合機種と比べても割安感を強くアピールしている。世界規模で「大量に作って安く売る」拡大路線に加え、音楽ソフトなどの関連収入増にもつなげるしたたかな戦略が見える。(白櫨正一、サンフランシスコ 池松洋)
価格は現行型の半分「我々は初代アイフォーンで学んだことをすべて新型につぎ込んだ。価格が半額で(通信)速度は2倍になった」
アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は、米サンフランシスコで開かれた発表会で、こう力を込めた。会場で最も大きな驚きをもって迎えられたのは、記憶容量8ギガ・バイト型で1台199ドル(2万1100円)と現行型の半分に抑えた価格だ。
米国では、ネット閲覧などができる高機能端末は通常、400〜500ドル程度で売られている。日本でも高性能機種は5万円を超えており、ライバル各社は「新型アイフォーンは信じられない安さだ」(NTTドコモ)と驚きを隠さない。
米証券アナリストによると、アップルは、思い切った低価格と世界同時発売による大量販売を前提に、発注量を増やすことでフラッシュメモリーなどの基幹部品を安く調達し、端末価格を安く抑えたという。低価格をテコに新型アイフォーンの利用者が増えれば、音楽などの販売サイト「iTunes(アイチューンズ)」の収益増も見込める。携帯電話機というハードを安く提供し、音楽などのソフト販売で売り上げの飛躍を目指す目算とみられる。
1000万台の普及目指す新型アイフォーンは、第3世代(3G)という高速データ通信に対応し、全地球測位システム(GPS)機能を搭載するなど、新たな機能も加わった。2007年6月に発売された初代の現行型は、5月末までに欧米など6か国で600万台売れた。アップルは新型を年内に世界70か国で発売し、2008年累計で1000万台の販売を見込む。
日本での販売元となるソフトバンクモバイルの孫正義社長は、発表会場で記者団に「(グループの国内検索最大手)ヤフージャパンにもアイフォーン向けサービスの提供を促していく」と述べた。調査会社「IDCジャパン」の木村融人シニアアナリストは「この安さと機能があれば、国内でもヒットするのでは」と予測する。
一方、日本の携帯電話端末は、ボタン入力方式が普及しており「メーカー各社もメールが打ちやすい形状や設計に力を注いできた」(携帯電話大手)。このため、アイフォーンのタッチパネル方式では操作しにくいとの声もある。さらに、日本の高機能端末では一般的となっている、携帯向け地上デジタル放送「ワンセグ」の受信機能もない。携帯電話研究家の木暮祐一氏は「日本市場で爆発的に普及するのは難しいのではないか」とも指摘している。