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2008年06月10日(火) 08時02分

秋葉原無差別殺傷 7人の無念 凶刃に裂かれた「夢」 就職「内定」/跡継ぎに…産経新聞

 就職の内定をもらい希望に夢を膨らませていた女子大生、孫の将来に思いをはせていた祖父…。再び繰り返された無差別殺人で、理不尽にも命を奪われた7人の被害者。「誰でもよかった」という加藤智大(ともひろ)容疑者(25)の供述に、遺族や友人、関係者は「無念としかいいようがない」「(犯人を)ぶん殴ってやりたい」などと口々にと語り、やり場のない怒りと、深い悲しみにくれていた。

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 ■武藤舞さん

 東京芸大4年の武藤舞さん(21)=東京都北区=は電子オルガンが得意で、都内や地方のホールを回って音響の研究を行うアルバイトもしていた。「コンサートの企画、マネジメントの職場で働きたい」と夢を語り、就職活動ではすでに内定ももらっていた。

 録音技術に関する卒論を執筆中で、音楽環境創造科の亀川徹准教授(47)は「いつもハキハキとしゃべっている姿が目に浮かぶ」と言葉を詰まらせた。都立日比谷高校で同級生だった間瀬亜希子さん(21)は卒業後、「舞のバンドのライブに、ボーカルで飛び入り参加させてもらった」と振り返る。

 中2時代、米カリフォルニア州でホームステイも経験。中学の吹奏楽部の後輩、畑山陽子さん(17)は、「会えば笑ってあいさつしてくれたのに」と伏し目がちに話していた。

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 ■藤野和倫さん

 「家の手伝いをよくしてくれる優しい子でした」

 東京電機大2年、藤野和倫さん(19)=埼玉県熊谷市=の父は二男を奪われた悲しみをこう語った。当日は友人と秋葉原に、映画観賞やパソコンの部品を買うために来ていた。

 情報環境学部で情報処理などの授業を履修。プログラマーを目指していた。サークル活動はしていなかったが、明るい性格だった。

 自宅前では、同居する公認会計士の祖父(81)が「子どもは娘2人なので養子にしていた。藤野家の跡継ぎにと決めていたのに」と唇をかんだ。近所の男性(75)は「子供のころ妹さんとサッカーをやっていた。運動神経がよくて、あいさつもちゃんとするいい子だった」と肩を落とした。

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 ■中村勝彦さん

 無職の中村勝彦さん(74)=東京都杉並区=は30年以上前、少し離れた府中市内で歯科医を開業。3月31日で引退し、妻(74)と海外旅行に行くなど余生を楽しんでいた。

 近所の主婦は「家族全員が(歯科医院で)お世話になった」と述べ、自営業の男性(53)は「10年以上前から古いベンツを愛用し、ものを大事にする人だった。大柄だが腰の低い方だった」。

 妻は「主人は子供や孫の将来を心配していた。無念です」と声を震わせた。

 当日は長男とパソコン関係の買い物に。外出はいつも妻と一緒だったが、この日に限り一緒ではなかった。秋葉原にはほとんど行ったことがなく、「長男と外で昼食を食べる」と機嫌良く出ていったという。

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 ■川口隆裕さん

 東京情報大2年、川口隆裕さん(19)=千葉県流山市=は情報システム学科を専攻。父の健さん(53)は自宅前で「よくも殺してくれたなと言いたい」と話し、1人息子を失った怒りをあらわにした。

 中学時代はハンドボール部、高校ではコンピューター部に所属し、友人も多かった。コンピューターやゲームが好きで、よく明け方までゲームをしていた。

 大学によると、10月にある「基本情報技術者」のコンピューター資格試験を受けるため、勉強を頑張っていた。まじめで協調性のある穏やかな性格だった。

 8日は高校の同級生ら3人と秋葉原に出掛けた。「将来はコンピューター関係の仕事に就きたかったはず」(健さん)という。

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 ■松井満さん

 調理師、松井満さん(33)=神奈川県厚木市=の悲報に、自宅付近の主婦(52)は、「ご両親には言葉のかけようがない」と怒りをにじませた。

 両親と弟とみられる3人は、9日未明に帰宅。終始無言で、うつむいたまま玄関に入った。

 地元の市立森の里小、市立森の里中を卒業。別の主婦(56)は、「中学までよくみかけたが、家の中で遊ぶような子という印象。最近は月に1、2回、家の近くで白いワンボックスの車に乗っているのを見る程度だった」と話した。

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 ■小岩和弘さん

 無職の小岩和弘さん(47)=東京都板橋区=方は、妻と息子の3人暮らし。「あいさつ以上の話はしたことがない」と男性(80)が語るように、近所づきあいはなかった。

 一方で隣人の男子大学生(19)は、「会えばきちんとあいさつしてくれた」と話すなど、律義な一面も。近くの女性(63)は「10年ほど前、お子さんが小さいとき、よく家の前の駐車場でキャッチボールをしたり、子供が乗る自転車を支えながら歩く姿をみかけた」と子煩悩な様子を振り返った。

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 ■宮本直樹さん

 会社員の宮本直樹さん(31)=埼玉県蕨市=の自宅があるアパートには9日、父親が訪れ、「残念です。(秋葉原へは)買い物に行ったのだと思う」と言葉少なに語った。

 同県川口市の実家に中学生ころから住み、さいたま市内の私立高校を卒業後、都内の情報処理の専門学校に通ってコンピューター技術を学んだ。最近、1人暮らしを始めた。

 実家近くの人らは「色白で細く、無口なタイプ。弟と2人兄弟だった。気さくで優しい一面もあり、約5年前には町内会の運動会で裏方の手伝いをしてくれたこともあった」と述べた。

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