2008年06月10日(火) 13時19分
トンチンカンなスロープの理由を聞いてみた(オーマイニュース)
前回の記事は5月24日に写真を撮って、原稿を書き、26日に掲載されたが、コメント欄などで指摘があった通り、取材不足な面があった。
「トンチンカンなスロープ」ってどんなの?
そこで5月29日、再び町田市の農協に行き、スロープの件と手すりの件を尋ねてみた。
窓口の職員の方は質問の意図が通じないらしく、スロープのところまで一緒に出てきてくれた。そこで改めて質問した。
「このスロープはどんな意図で作られたのですか?」
すると、スロープを見ながらはじめて知ったかのように「つ、使えませんよ……ねぇ」と言う。
「このスロープを作った経緯を知りたいんですけど」と聞くと、職員は「???」という感じだったので、さらに質問を補足した。
「造った以上、何か意味があるのではないのかなと思いまして……」
職員達は困惑気味で答えが出てこなかった。
更に質問した。
「この手すりのようなものは、何のためにあるのですか? 見たところ手すりにしては太すぎますし」
この質問にも職員らは「?」でラチがあかない。
冗談で「今時、馬や牛を連れてきて、ここに繋いでおくという事はないでしょう」と言うと、職員は苦笑しながら
「犬を連れてこられる方がここに繋いでおくことはあります」
と言っていたが、到底そんなことのためにわざわざ造ったとは思えない。重機による防犯にしては角度といい場所といい、大きさといい理解しがたい。とりあえず、ちゃんとした説明を受けたいと自分の職場の名刺を渡し連絡をいただけるようお願いして、その場を去った。
その日わかったことは、まず、農協は窓口に従事する職員に、あの不可思議なスロープの意図を何も説明していないということ。第2に、職員たち自身も意味がわからないスロープがありながら、何の違和感もなく見過ごしているという現実であった。
待てど暮らせど返事が来ない。
1週間経った6月5日、再度、農協へ行った。今度は手製の市民記者の名刺を持って、責任ある立場の方に直接話を聞こうと思って望んだ。
同じ窓口を訪れると、前回対応してくれた職員がいたので「この間の件で支店長さんにお話しを伺いたいのですが」と申し出た。あいにく不在だった。
「それでは次に責任ある方をお願いします」と言うと、次長兼管理課長という肩書きを持つ方と話ができた。
次長兼管理課長のお話しによると、町田市農協忠生支店は昨年の10月ごろ、出入り口周辺を改築したという。
それまでは、農協への出入りは階段の隅にコンパネで造られたスロープがあった。もちろん手すりなどついてなく、老朽化が懸念されていた。
ATM 室への出入り用スロープは、バギーを押したお母さんたち用だという。2段よりは1段の方がいいのかも知れないが、しかし、ドアは手前に開くのだからバギーはスロープの下、若しくは横に置いて、ドアを一杯に開き(中途半端に開けると自動的に締まってしまう)バギーを押し上げ利用することになる。何か合点がいかない。
手すりのようなものは、じつは「手すり」ではないらしく、以前、ATM室の前に人の列ができ、ドアに押されて転んだ人がいたそうだ。だからそこに列ができないようにバリアを置いたのだという。
そして、こちらは聞いてもいないのに、お年寄りや車椅子ユーザーのためにATMを本舎の中に置くことを考えているが、1000万円近く費用がかかるので、検討中であるという。そんなにコストがかかるとは知らなかった。
そうであれば、今のスロープ周辺を改築した方が安上がりかも知れない。
もし農協内の事務職やコンピュータエンジニア、あるいは他の職種でも、車椅子ユーザーの雇用率を上げて、職員として従事するユーザーの数が増えれば、周りの職員たちも自然と様々な点に気付き、それが結果的に地域住民に対するサービス向上として反映されていくのではないか。次長兼管理課長の話を聞きながら、そんなことを感じた。
帰り際、たまたま近くにいた、バギーを押している女性にきいてみた。
「あそこのATM、バギーごと入ります?」
「あぁ、バギーはいつも外に置いて、子供は抱いて入るわ」
それを聞いて、ため息が出た。
(記者:関根 善一)
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