歩行者天国の交差点に突然現れた静岡ナンバーの二トントラックがすべての始まりだった。七人の命が奪われ、十人がけがをした東京・秋葉原の無差別殺傷事件。「撃つぞ」と拳銃を構えた警官が容疑者を取り押さえるまでわずか数分間。いったい何が起きたのか。
午後零時半ごろ、トラックは突然、通行人に突進した。ハンドルを握っていたのは静岡県裾野市から来た
トラックは交差点を数十メートル通り過ぎて停止した。新宿区の自営業者(57)は、運転席から降りた男が三人に次々体当たりしている姿を見た。サバイバルナイフで刺す瞬間だった。最初に襲われたのは若い男性。次に携帯電話をキャンペーンしているような服装の女性。そして中年男性。
近所の駐車場の管理人
救護活動が始まった交差点。「男は何かをしゃべりながら、倒れていた一人に馬乗りになり、刃物で何度も刺した」と大田区の男性フリーター(19)は興奮していた。
男性看護師は、けが人を介抱していた警官が刺されるのを見た。よろめくように倒れる警官。救護を手伝った運転手(42)は「とにかくひどい状態だった」と話した。
加藤容疑者はサバイバルナイフを握り締め、歩行者天国の大通りを南に向かい走り始めた。「ワー」「キャー」。悲鳴とともに数百人が一斉に逃げ出した。
交差点から数十メートル離れた路地。ビル七階に住む
この路地で、加藤容疑者は交番の警官らに追い詰められた。外国人観光客向けの店を営む男性(50)が目撃。加藤容疑者が振り回すサバイバルナイフと警官の警棒がぶつかる金属音が何度も響く。「撃つぞ」。腰にゆっくりと手を回し、拳銃を構えた警官。ナイフを捨てた加藤容疑者に、非番で居合わせた警官も加わり、取り押さえた。パトカーが到着した時、加藤容疑者はすっかり静かになっていた。