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2008年06月08日(日) 17時36分

「ホコ天がパニック状態に…」一斉に逃げ出す群衆 秋葉原通り魔事件産経新聞

 「群集が急に、津波が来たかのように走り出した」。白昼の秋葉原で起きた通り魔事件。職業不詳の加藤智大容疑者(25)は大声で叫びながらトラックから降り、次々に通行人に襲いかかった。目の前で繰り広げられた惨劇。目撃者の証言から犯行を再現した。

【写真で見る】 白昼の凶行…ナイフで通行人を切りつけたのはこの男

 「ドーン」。トラックがタクシーに衝突した轟音(ごうおん)が響いた。加藤容疑者は8日午後0時35分ごろ、レンタカーのトラックで神田明神下交差点方面から神田3丁目交差点にジグザグ走行で突っ込んだ。5、6人の通行人を次々とはねたとみられ、年配の男性はかすかに動いていたが、複数の男性らがぴくりともしないで点々と路上に横たわっていた。周辺は血の海となった。
 トラックは数メートル先で停止し、運転席からベージュのジャケットを着た加藤容疑者が買い物客や観光客らでごった返す中央通りに降りてきた。
 加藤容疑者は突然、はねられて路上に倒れ込んでいた1人の男性に馬乗りになり、体を持っていたサバイバルナイフで何度も刺しはじめた。男性はピクリともしなくなった。
 加藤容疑者は交差点に向かって走り出した。交差点で倒れていた男性の様子を見ていた制服警察官に話しかけるような様子で近づくと、さっと脇腹を刺した。平然とした様子だったという。
 右の脇腹を押さえ、路上に崩れ落ちる警察官。加藤容疑者は「ワー」と自ら叫び声を上げながら、ナイフを持って走り出した。
 観光地として年々知名度が上がっている秋葉原。中心部の歩行者天国を散策していた買い物客らは、当初はやじ馬的に悠然と構えていた感もあったが、この時点でただならぬ事態に気づき、周辺にいた人々が悲鳴とともに逃げ出した。つられる形で、何が起きたか把握していない人たちも一斉に走り出す。
 近くの電器店従業員は「数百人が一斉に動いた。津波が来たかのように、急にみんなが走り出し、パニック状態になった」。
 秋葉原にCDを買いに来ていた会社員の男性(35)は「あっという間に加藤容疑者が警官と女性や男性を刺したのを見て一瞬呆然とした。女性は腹が真っ赤に染まっていた。男性はあおむけに倒れていた。はっと気付いて『やばい!』と思った。パニック状態の中、人並みに流されるように全速力で上野方面に走って逃げた」。
 明治通り沿いの喫茶店の男性従業員(58)は「加藤容疑者は、刺したときは平然とした様子だった。救急車が来るのが遅く、10分以上、通行人が負傷者を心臓マッサージや人工呼吸をしていた」。また、同店の男性従業員(40)は「全速力で転びながら走って店の中に逃げ込んだ。鳥肌がたった」と振り返った。
 加藤容疑者は駆けつけた警察官に追いかけられながらも、交差点の真ん中当たりで、出合い頭に女性の腹を刺した。明治通り沿いを駅方面にさらに走りながら、さらに別の男性を刺して逃げる。手には、黒っぽいナイフを持ち、振り回していた。
 警察官に追われる加藤容疑者は、明治通り沿いにある電気店の間の路地裏へ。「警棒を持った制服警察官と向かいあい、少し距離を置きながら、チャンバラのような感じでもみ合いながらにらみあった」(免税店の男性店主)。加藤容疑者は興奮状態で、ナイフを上に上げて威嚇。額からは血を流していたが、顔つきや服装に目立った特徴はなく、「普通の男性だった」(同)という。
 「ナイフを捨てないと撃つぞ」。数分間の緊張したやり取りの後、警察官がこのような言葉を告げ、拳銃をゆっくりと構えた。加藤容疑者は観念したのか、まもなくこの警察官と、私服姿の数人に組み伏せられ、現行犯逮捕された。

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