2008年06月08日(日) 19時33分
「人権団体が一番恐れるのはネット」 倫理なきブログ、堀田氏に聞く(産経新聞)
『改訂版 実例・差別表現』(ソフトバンク クリエイティブ刊)には、1960年代から現在に至るまでのさまざまなメディアに現れた部落差別、障害者差別、民族差別、性差別、宗教差別、職業差別などの実例がこれでもかと思われるほど集められている。
同書によれば、既存メディアの差別表現をめぐる歴史は次のようであったという。
《1960〜70年代は高度成長とマスメディアの勢力拡大という社会情勢の中で、(部落解放同盟などの)人権団体は差別の拡大、助長、再生産を恐れてメディアを厳しく糾弾したのである。その結果行政も支援対策を前進させ、メディアも自主規制を進め、一旦は沈静化した》
しかし、同書の著者で元小学館編集総務部長のジャーナリスト、堀田貢得氏(67)は「人権団体が今、いちばん恐れているのはインターネットだ」と話す。ネット時代の到来により、誰もが情報発信者になれるようになったことで、人権団体にとっては統制の取りづらい状況が生まれているという。
「かつて、人権団体は既存メディアの差別表現だけを監視していればよかった。既存メディアの差別表現を糾弾すれば、ある程度は収拾が着いた。しかし、いまやブログ時代に入り、ネット上の差別問題は新たな段階に入った」(堀田氏)
ブログは2002年ごろ登場し、急速に普及した。身近な話題から社会問題までテーマは多種多様だが、人気のブログは数万人の読者を持ち影響力も大きい。社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会によると、07年9月時点の国内のブログ閲覧者は約2958万人に上る。
堀田氏は「芸能人から一般人までがブログをつづる現在、書き手に差別についての基本的な人権感覚がないと、どんな差別表現が飛び出してくるか分からない。ネットのボーダレス性、影響力を考えると、人権団体の監視も今後いっそう厳しくなる。差別表現を指摘し、抗議する段階に至れば、既存メディア以上の大規模な糾弾を招きかねない」。
その上で「インターネットの成熟期を迎えた今、こうした人権団体がネット上の差別表現、差別扇動に沈黙を続ける保証はまったくなくなった」と警鐘を鳴らす。
法務省人権擁護局によれば、全国の法務局が07年に受理したインターネットによる人権侵害は418件と、前年より48%増えた。近年、増加傾向が続いている。
堀田氏は「もちろん、インターネットはグーグルのように世界の叡智に瞬時に、無料でアクセスできるような素晴らしい世界をもたらした。しかし、ネットには影の部分が存在することも認識するべきだろう」と指摘した上で、同書をこう結んでいる。
《そこに「倫理」が喪失すれば、ネット、ウェブ社会は人間にとって背信のメディアに成り下がってしまうことを肝に銘じなければならない。残念ながら現状のネット社会には、世論を形成し、体制を動かすパワーは存在しない。ジャーナリズムが存在しないからである》
ジャーナリズムが存在しないとは、メディア倫理が存在しないことにほかならない。(イザ!編集部)
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