2008年06月07日(土) 17時47分
メディア倫理なきブログ「炎上ならまだいい」 ジャーナリスト堀田氏に聞く(産経新聞)
インターネット上でのブログの「炎上」が社会問題化する中、ネット上の差別表現・差別煽動の実態と対応について考えた書籍『改訂版 実例・差別表現』(ソフトバンク クリエイティブ刊)が、このほど出版された。著者は元小学館編集総務部長で東京経済大非常勤講師のジャーナリスト、堀田貢得氏(67)=メディア論。近年急増しているブログでの表現問題について、「炎上するくらいならまだいい。今後は人権団体が糾弾に乗り出してくることもあり得る」と警鐘を鳴らす。(イザ!編集部)
堀田氏は小学館で「週刊ポスト」編集長代理などを歴任。その後、同社の出版物について、部落問題をはじめ障害者問題、民族問題、性に関する問題などの差別表現のチェックや訴訟などを担当する編集総務部長を10年間務めた。退職後の2003年に『実例・差別表現』を上梓。今回、改訂版で新たにネット上の差別表現に関する章を加えた。
同書によれば、オンラインでの差別表現は1990年代前半のパソコン通信時代からすでに現れており、94年にはニフティサーブ(現ニフティ)の掲示板「スピリッツ(こころ)」などで被差別部落の地名について情報交換が行われていたという。
インターネットが急速に普及した90年代後半からは、「2ちゃんねる」などの掲示板で差別表現が散見されるようになった。堀田氏によれば、特に目立つのは部落差別のほか、在日韓国・朝鮮人差別だという。
《これらの書き込みはいずれも「名無しさん」というハンドルネームで書き込まれたいわゆる匿名性に乗じたものである。もしこれが既存メディアである出版等での記述であったらどのような事態が起きたか想像に難くない。しかしネット、ウェブ上では人権団体等も手をこまねくだけである》(同書)
堀田氏によれば、新聞、雑誌、書籍、テレビなど既存メディアの場合は、公表前に社内でさまざまなチェック体制を通過していくが、ネットではこのような機能は働かない。「こうした状況が人権侵害の要因になっていることは間違いない」という。
2002年5月には、ネット上でのプライバシー侵害などを救済するため、「プロバイダ責任制限法」が施行された。プロバイダーが違法な内容の情報を削除したり、発信者の個人情報を開示する手続きなどが規定されている。
しかし、発信元の情報開示は憲法21条の「表現の自由」や「通信の秘密」、電気通信事業法の「検閲の禁止」(3条)や「秘密の保護」(4条)との兼ね合いから、開示にいたるケースは削除に比べ少ない。開示請求をめぐり被害者とプロバイダー間で訴訟が起きることもある。堀田氏は「救済の法律はできたが、ネット上での差別表現、差別扇動は何も変わっていない」と指摘する。
劇作家の井上ひさし氏(73)は、堀田氏が代表幹事を務めていた「出版・人権差別問題懇談会」での講演でこう述べたという。
「私たちは憲法を誤読している。言論や表現の自由は権力に対して、政府に対して、力のあるものに対して、言論は一切自由であるということで、弱者に対して言論の自由だなどと決めているわけではない」
こうした中、ネットはブログ全盛時代に入った。
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