大阪府の橋下徹知事は31日、当初歳入に含めない方針だった退職手当債の発行を容認する方針を固めた。事業費削減額が目標の400億円より少なくとも数十億円下回る見通しとなり、赤字回避のためにやむを得ないと判断した。橋下知事は借金を抑制する方針で1100億円の財政再建目標を掲げていたが、その前提が崩れることになる。
退職手当債は職員の退職金の財源に充てる借金で、今年度は最大270億円の発行が可能だ。ただ、改革プロジェクトチーム(PT)は「府債発行ゼロ」との原則を掲げる橋下知事の意向で、退職手当債の発行をしない前提で1100億円の目標を設定。このうち400億円を事業費カットで捻出(ねん・しゅつ)する財政再建案を4月に発表していた。
ところが、橋下知事がその後、「障害者施策、警察、切迫した命にかかわるものは予算計上する」との方針を示し、医療費助成の削減を先送りするなどしたため、少なくとも数十億円の削減が見込めなくなった。
橋下知事は市町村に貸した資金の繰り上げ返済で200億円を確保することを決めるなど歳入増を図っているが、それでも財源不足を補うのは「厳しい状況」(府幹部)。こうしたことから退職手当債の発行を容認したという。
ただ、1100億円の目標額は、退職手当債270億円を発行しない場合の今年度の財源不足額1080億円が前提。橋下知事は「収入の範囲で予算を組む」との方針を掲げており、退職手当債の発行で、これまでの方針との整合性が問われそうだ。