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2008年06月01日(日) 02時46分

<被災者支援金>首都直下など4大地震で9兆円 国の試算毎日新聞

 国が切迫性を指摘して重点的に対策を進める首都直下、東海、東南海、南海の4地震がすべて発生すると、被災者生活再建支援法に基づいて被災者へ支給する支援金が総額約9兆円に達する見通しであることが、国の試算で分かった。財源となる基金の残高は565億円にとどまる。国は「財源は地震が起きた時に考える」と説明するが、専門家からは「支給は困難」として、住宅耐震化の促進を求める声が出ている。

 同法は98年、阪神大震災を教訓に成立。住宅が全壊した世帯などに最大300万円を支給する。昨年の改正で住宅の再建費用に充てることが可能となり、年齢や年収による支給制限も撤廃した。

 内閣府は改正を受けて、国の被害想定を基に支給見通しを試算。首都直下地震3兆6400億円(改正前1兆2000億円)▽東南海・南海地震2兆9900億円(同9700億円)▽東海地震2兆2100億円(同7100億円)−−と、いずれも改正前の約3倍になり、総額が8兆8400億円となることが分かった。

 支援金の財源は、都道府県が拠出した基金と運用益で半額を賄い、残りは国が補正予算などで補助する。過去に最も支給額が多かったのは、新潟県中越地震の72億1900万円。巨額となった場合の財源は未検討で、内閣府は「いつ起こるか分からない自然災害に予算を付けるのは難しい」と説明する。

 一橋大国際・公共政策大学院の田近栄治教授は「首都直下地震などが起きれば、支援金支給は困難だ。地震後に『支給できない』と言い出すと、混乱を増大させる。その事実を国民に示し、住宅耐震化を進めて被害を減らすことが重要だ。災害時には都市機能回復や災害弱者の救済も急務で、国は国民に判断を仰ぎ、災害時の予算の優先順位を決めておくべきだ」と指摘する。

 国の予測によると、今後30年以内の発生確率は▽首都直下地震70%▽東海地震87%▽東南海地震60〜70%▽南海地震50%で、比較的近い時期に相次いで起きる可能性も否定できない。【鈴木梢】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080601-00000003-mai-soci