国土交通省は公共工事の発注後に資材が急に値上がりした場合に、建設業者に支払う工事代を上乗せする「単品スライド条項」を適用する方針を固めた。鋼材価格が急騰しているためだ。実現すれば第2次石油危機後の1980年以来28年ぶり。地方自治体にも広がる可能性がある。
公共工事は入札などで受注業者を決めたときに工事代金も決まる。しかし、最近では受注した業者が工事資材を実際に買う前に値上がりが進み、業者の採算悪化を招いているという。条項の適用で業者の収益は改善されるが、国民負担は増える恐れがある。
単品スライド条項は、81年に公共工事契約書のモデルとなる国の約款に盛り込まれた。「工期内に主要材料の価格に著しい変動が生じ、請負代金額が不適当となった時は請負業者は価格変更を請求することができる」としている。石油危機の影響でセメントやアスファルトが高騰した80年に、建設省(当時)と業者らが協議し、値上がりの一部を工事代に上乗せした措置を明文化した内容だ。
しかし、発動基準があいまいなため、国交省は(1)鋼材の値上がり額が工事代金の一定割合を超えた場合(2)受注後数カ月間の鋼材単価の上昇率が一定以上——といった基準作りを進めている。長期間の工事には、1年後に費用の変動に合わせて代金を増減する別のスライド条項があるため、単品スライドは、数カ月前の発注工事を対象にする。6月にも適用したい考えだ。
鋼材は、ここ3カ月間で鉄筋が1トン7万8千円から10万円に、マンション建設などに使うH形鋼は1トン8万8千円から11万8千円になった。このため、業界団体が条項の適用を求めていた。
公共工事の入札不成立の増加も背景にある。関東地方整備局の07年度の入札不成立件数は全体の3割に達した。国交省は、受注後の資材高騰で赤字工事になるのを業者が敬遠するのが一因とみている。
国交省は、適用で工事代金が数%増えると試算する。その分、国民負担が増えるため、緊急性の低い工事の発注を遅らせるなどして、予算配分を調整する方針だ。
地方自治体の大半も単品スライド条項を盛った契約書を使っており、国交省の適用基準を参考に適用を検討することになりそうだ。(座小田英史)
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