【ボン(ドイツ西部)=石井徹】ドイツ・ボンで開かれた生物多様性条約締約国会議(COP9)で、報告書「生態系と生物多様性の経済学」が発表された。森林の多様性が失われると、2050年に世界で最大500兆円もの損失もあり得ることがわかった。
報告書のまとめ作業は、ドイツ政府と欧州委員会が進めてきた。温暖化による経済的損失を検証した英国の2年前の「スターン報告」にちなんで、「生物多様性版スターン報告」と呼ばれる。
報告書によると、このまま対策を取らないと50年までにいくつかの生態系は回復不能になると指摘。「近代的農業への転換、社会生産基盤の拡大、温暖化などで、自然地域のうち11%が失われる」「漁業や海洋汚染、温暖化による白化現象などで30年までにサンゴ礁の60%が失われる」などの可能性を挙げた。
また「森林生態系の劣化による経済的損失は50年には1.35兆〜3.1兆ユーロ(約221兆〜508兆円)に上る」と指摘、世界の国内総生産(GDP)を6%押し下げる可能性があるとした。
報告書をまとめた研究プロジェクトリーダーでドイツ銀行取締役のパバン・スクデブ氏は「生態系サービスの価値と喪失のコストを理解することで、新しい市場の創出につながる」と強調、温暖化問題における排出量取引のような仕組みの必要性を訴えた。
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