海外での建設コンサルタント大手「パシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)」(東京)が、政府の途上国援助(ODA)事業を受注するために数億円の裏金を捻出(ねんしゅつ)、その金を東南アジア各国の公務員へのリベートにあてていた疑いがあることが30日、関係者の話でわかった。
裏金は、旧日本軍が中国で遺棄した毒ガスなど化学兵器の処理事業に絡む人件費を国に水増し請求した分などで賄っていた疑いも浮上。併せて、同社が税務申告でも架空経費の計上などで少なくとも1億円の所得を隠していたことから、東京地検特捜部は法人税法違反(脱税)容疑での立件を視野に調べている。
この問題をめぐっては、同社の元首脳が朝日新聞社の取材に対し、03年以降に香港の現地法人などに年間1億円以上を送金していた金の一部が現地の公務員へのリベートとして使われた、などと証言していた。関係者などによると、PCIは、化学兵器の処理事業での水増し請求などで得た資金を都内にある子会社に送金。この子会社を通じて香港にも送金していた。フィリピンやタイなど数カ国の現地法人にも送り、各法人から現地のエージェント(代理人)に渡されていたという。いずれも営業調査費などの名目で経費と仮装していた疑いが持たれている。
PCI元社長の荒木民生被告(71)と同森田祥太被告(66)は化学兵器の処理事業をめぐり、約1億2千万円を流用し、PCIに損害を与えたとして特別背任罪で起訴されている。また、PCI前社長の多賀正義容疑者(62)ら5人は同事業の発注元である内閣府から約1億4100万円をだまし取ったという詐欺容疑で逮捕されている。
PCIが02年4月から昨年11月までに受注したODA事業は約400件(共同企業体の契約を含む)で計約650億円。
PCIの現経営側は、海外への送金は認めつつ、「東南アジア各国の入札情報を収集するための費用で違法性はない」とリベートについては全面否定している。
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