公共事業を受注する建設会社から自民党長崎県連への政治献金はわいろ性が強いとして、準大手ゼネコン「五洋建設」(東京都文京区)の株主が同社の元役員らに損害賠償を求めた代表訴訟は30日、東京地裁(難波孝一裁判長)で和解が成立した。和解条項などで同社は今後、長崎県連に限らず、すべての政党の都道府県連に対する政治献金やパーティー券の購入をやめることを明らかにした。
株主側弁護団によると、ゼネコンが政治献金の中止を明らかにするのは初めてだという。公共事業に依存してきたゼネコンが、法令順守の立場からこれまでの「慣習」との決別に踏み切ったともいえる対応で、業界にも影響を与えそうだ。
今回の訴訟をめぐっては、大阪市の市民団体「株主オンブズマン」の会員が、当時の五洋建設の経営陣ら6人に対し、同社が93〜01年に長崎県連に行った政治献金計5900万円と、談合行為で公正取引委員会から命じられた課徴金約1億6千万円など計約2億2千万円の返還を求めていた。
和解成立後、記者会見した弁護団によると、6人が解決金8800万円を支払うことで合意。同社は今後、オンブズマン側が選んだ元公正取引委員会審判官1人を加えた「談合防止コンプライアンス検証・提言委員会」(仮称)を設置し、必要費用は解決金で賄うという。
弁護団は、ゼネコンが社内に設けた法令順守のための委員会に株主側指名の第三者を加えるのは「きわめて異例だ」と指摘。弁護団長の松丸正弁護士は「談合と決別し、地方政界とゼネコンの癒着と手を切ることを宣言した。ほかのゼネコンも従うべき規範になる内容だ」と話した。
一方、五洋建設は和解について「全社を挙げてよりいっそうの法令順守の徹底を図り、実効ある体制を構築していく」とするコメントを発表した。(河原田慎一)
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〈自民党長崎県連の政治献金事件〉 長崎県知事選の選挙資金としてゼネコンから寄付を受けたのに政治資金収支報告書に記載しなかったとして、当時の自民党長崎県連幹事長らが公職選挙法違反(特定寄付の要求)などに問われ、03年に長崎地裁で有罪判決を受けた。判決は、幹事長らが工事の受注実績に応じて寄付を要求したと認め、「業者は要求を断れないのが常識で、上納金を連想させる強引、露骨な要求だった」と断じた。
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