名古屋市営地下鉄の久屋大通駅で乗客14人がけがをしたエスカレーター事故は、エスカレーターの制御装置の台座を固定するボルトの金属疲労と固定の仕方の不備が重なって引き起こされていたことがわかった。事故原因はこれで、ほぼ特定された。
事故機のずれた制御装置の台座=名古屋市交通局提供
メーカーの日本オーチス・エレベータ(東京都中央区)などによると、事故後に折れているのが見つかった3本のボルトの破断面を調べたところ、1本は断面がきれいに割れているのが特徴の金属疲労の痕跡が見られた。
もう1本でも破断面の約4割に金属疲労の痕跡が見られたが、残りの部分は何かの力が働いてえぐられたような跡があった。もう1本は全体が引っ張られてちぎられたような断面になっていたという。
事故機の台座は通常、6本のボルトで固定されているが、昨年9月にうち2本が金属疲労が原因で折れているのが見つかった。このため、オーチス社はボルトが折れていた場所など計4カ所を、台座の下の基礎部分に溶接した鉄製金具で台座を押さえつける補修をした。
台座はこの補強金具と、折れずに残っていた4本のボルトで固定されていたが、モーターの振動に加え、エスカレーター本体とつなぐ駆動チェーンに常に引っ張られる状態になっている。
ボルトの破断面の状況などから判断すると、(1)ボルトの1本が金属疲労でまず破断(2)金属疲労が進んでいた1本が続けて破断(3)残りの2本のボルトと補強金具では負荷に耐えきれず、1本のボルトだけが残ってあとは一気に破断した——という状況が想定されるという。補強金具はいずれも溶接部分から壊れていた。
名古屋市交通局の調査で台座がずれたことがエスカレーターの逆走に最終的につながったことが明らかになっていたが、台座のずれの原因はわかっていなかった。
保守点検を市交通局から委託されている交通エンジニアリング(名古屋市)が4月に定期点検した際には、ボルトの破断は確認されなかった。ただ、目視での確認にとどまったため、この時点で金属疲労が起きていたかどうかはわかっていない。
オーチス広報室は「溶接で補強した処理は間違っていないが、早急に新しいボルトに換えておくべきだった」と話している。(工藤隆治、熊谷潤)
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