広島で被爆したことが原因で病気になったにもかかわらず、原爆症と認めないのは違法だとして、仙台市内の2人が国を相手取り、不認定処分の取り消しと1人あたり300万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日午後、仙台高裁であった。井上稔裁判長は処分を取り消した一審の仙台地裁判決を支持、国の控訴を棄却した。
仙台高裁前で「勝訴」と掲げ、笑顔を見せる波多野明美さん(中央)ら原告団=28日午後、仙台市青葉区、戸村登撮影
原爆症訴訟は現在6高裁などで係争中だが、厚生労働省が4月に原爆症の認定条件を緩和した新基準の運用を始めた後の判決は今回が初めて。
訴えていたのは、仙台市泉区の新沼ミツ雄(みつお)=ミツは式の字の「工」の部分が「三」=さん(84)と同市太白区の波多野明美さん(69)。旧陸軍の通信兵だった新沼さんは爆心地から2キロの兵舎内で被爆し、50代で腎臓がんに、60代で膀胱(ぼうこう)がんになった。波多野さんは爆心地から1.8キロの路上で被爆して82年に胃がんを手術し、後に胃切除後障害を患った。
原爆症の認定で国は、病気の原因が放射線かどうか(放射線起因性)と、治療が現在も必要かどうか(要医療性)の両方に当てはまることが必要としている。新基準では放射線起因性について、被爆地点の要件を爆心地から事実上、2キロ以内から3.5キロ以内にするなど条件を緩和した。
新基準運用後の口頭弁論で、国は新沼さんの「要医療性」を否定した上で「放射線起因性」は争点にしない方針を打ち出した。波多野さんは二つとも要件を満たさないと主張した。
旧基準だった07年3月の一審判決は、2人の病気と放射線との因果関係を認め、国の不認定処分を取り消した。
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