2008年05月28日(水) 19時46分
サマータイム本当にいいの? 省エネ、余暇増加へ疑問の声も(J-CASTニュース)
福田首相が意欲を示し、早ければ2009年からサマータイムが導入される可能性が出てきた。とはいえ、かつて導入されながら残業増加などの不満が出て4年で廃止された前歴がある。今回は果たしてうまくいくのか。
■北海道内の導入実験では、7〜8割が賛成
「サマータイムには、経営者の8割、従業員の7割が賛成していました。私たちは、北海道だけでもやりたいと思っています」
2004年から3年間、北海道内でサマータイムの導入実験をした札幌商工会議所の企画課長は、こう強調する。そのメリットとしては、経営者、従業員ともに、「退社後の活動の幅が広がる」「家族と触れ合う時間が増える」ことを挙げる声が大きかったという。
福田康夫首相も2008年5月26日、こうした理由に加え、明るい時間を有効活用して省エネに役立てられることから、サマータイム制度の導入に前向きな考えを示した。OECD加盟の先進30か国では、未導入は日本、韓国、アイスランドだけとあって、福田首相は「やっていない日本が異例。私もサマータイムをやってもいいのではないかと思っている」と記者団に語った。地球温暖化防止が主要議題になる7月の北海道洞爺湖サミットも念頭にあるらしい。
新聞各紙によると、制度導入の法案は、自民、民主など超党派の「サマータイム制度推進議員連盟」が今国会に提出する見込み。法案によると、サマータイムでは、3月の最終日曜日から10月の最終日曜日まで時計を1時間進めるとしている。
日本では、終戦直後の1948年にGHQの指令で、省エネなどのためサマータイムが実施されたことがある。しかし、残業増加などの不満が出て、わずか4年で廃止されてしまった。そんな前歴ありの制度が、日本で再び根付くのか。
内閣府が2005年に行った世論調査によると、サマータイムに「賛成」が51.9%と過半数を超えた。理由としては、「エネルギーの節約になるから」(66.2%)が最も多かった。「反対」は30.2%。ところが、NHKが同年行ったアンケートでは、「反対」が逆に54.7%で、残りの「賛成」を上回った。反対する理由として、省エネ面では、「熱帯夜ではクーラーをつけて寝なきゃ体が持たない。家庭内においては省エネ効果があるとは思えない」といった理由を挙げていた。
サマータイムについては、調査によって回答に差が出ている。
■サービス残業や長時間労働につながりかねない
では、札幌商工会議所の調査で、サマータイム「賛成」が7〜8割と高い割合を占めたのはなぜなのか。
同会議所では、調査対象が、呼びかけに賛同して実験に参加した企業の経営者や従業員であることを挙げる。さらに、導入目的としている地域経済活性化に役立つのではないかと企業が考えたことが大きいという。
アンケートでも、サマータイム賛成の理由として、企業業績の向上、消費支出の拡大を期待する声が寄せられている。「通勤の時間帯も涼しい時間に来られる」「仕事の効率化につながった」「余暇時間が活用できる」といった回答だ。
効果を見込んで、実験に参加する企業は、年々増えてきた。2004年は約200社、6000人の参加だったが、06年には約700社、3万人にも達した。さらに普及・啓蒙するため、その後も実験を継続している。
ただ、導入実験を通じて、課題も見えてきた。サマータイムでは、航空会社や金融機関などのシステムを変えなければならないが、そのコストが膨らむことだ。また、「(1時間早く起きると)仕事の開始、終了時に体調を崩しがちになる」「仕事が終わった後、何をしてよいか分からない」などとして反対する意見が出ている。
労働組合からも、懸念の声が上がっている。連合北海道札幌地区連合の事務局長は、「(北海道は緯度が高く)夏は本州より日の出が早いので、サマータイムの考え方自体は間違ったことではないと思います」としながらも、次のように指摘する。
「導入実験では、仕事の終わる時間が早まるか、明確に分かりません。導入によって、サービス残業とか長時間労働とかが過去にあったと聞いていますので、同じことが起こらないように担保するものが必要です」
内閣府の世論調査では、サマータイム反対と答えた人に、どのような条件なら賛成できるか、と聞いた。すると、「条件にかかわらず賛成できない」が28.7%と最多だったものの、続いて「省エネルギー効果,温室効果ガス削減が確実に見込めること」が24.2%,「労働時間の延長につながらないこと」が23.4%あった。
■関連記事
心配される電力不足 東電「暑い夏」乗り切れるのか : 2008/05/20
ビジネスで成功する能力を生み出す 「地頭力」がちょっとしたブーム : 2008/03/06
「グーグル」では「飯はタダ」 ダーツ、ビリヤードもある : 2007/07/17
サミット「環境問題」 日本はお荷物かリーダーか : 2008/05/20
若者あつめる「韓流レトロ居酒屋」 27歳経営者が語る「人気の秘密」 : 2008/01/23
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080528-00000002-jct-soci