本紙読書面「コミックガイド」などでマンガ評を執筆しているマンガ解説者、南信長さんによる『現代マンガの冒険者たち』が刊行された。
手塚治虫ら草創期のマンガ論や作家論の著作は少なくないが、マンガ表現が急速に多様化し始めた70、80年代以降のまとまったマンガ論はあまりない。64年生まれの南さんは「自分が読んできた現代マンガの流れの全体像を俯瞰(ふかん)する、いわば現代マンガの進化論を書いてみた」と話す。
「ビジュアルの変革者」「ギャグマンガの系譜」「ストーリーテラーの世界観」など五つのテーマで、代表的作家の特徴や影響を系譜図付きで解説した。独特のリアルな作画でマンガ表現に革新をもたらした大友克洋や、画力において「カリスマ的存在」の井上雄彦ら。ギャグマンガにポップアートの斬新さを持ち込んだ江口寿史、従来の4コママンガの文法を破壊した、いしいひさいちなど、それぞれの作品世界を読み解き、現代マンガの多様さや魅力を改めて紹介している。
年間100本以上のマンガ評を手がける著者による、現代マンガ史の「教科書」ともいえる著作だ。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200805280221.html