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2008年05月28日(水) 03時01分

基礎的財政収支の黒字化目標先送りへ 民主、衆院選公約朝日新聞

 民主党は、政府と同じ2011年度に設定してきた国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標年度を、次期衆院選マニフェスト(政権公約)で先送りする方向で検討に入った。財政再建の速度を緩め、「国民生活の再建」を優先する姿勢をアピールする。

 政府は06年の骨太の方針に「11年度の黒字化」を明記し、民主党も07年参院選の公約で同じ目標を掲げた。しかし、昨夏の参院選後に強まった歳出増要求や景気の減速などで、目標達成は困難との見方が強まっている。民主党の見直し論は、与党の財政再建論議にも影響を与えそうだ。

 民主党は党税制調査会(藤井裕久会長)や党財政金融部門で見直しに着手する。社会保障費抑制を狙った後期高齢者医療制度に対する国民の不満をくみ取り、「国民がのたうち回るのでは意味がない。無駄遣いを続ける政府の目標年度に迎合する必要はない」(幹部)として、小泉政権から続く歳出・歳入一体改革の限界を指摘する構えだ。

 見直しにあたっては(1)談合・天下りの根絶(2)地方分権の推進(3)国家公務員総人件費削減(4)特殊法人・独立行政法人の原則廃止——などによる歳出削減額と、黒字化に必要な期間を改めて算定。政権獲得後を起点とした目標期間を示すことを検討している。

 あわせて「国民生活の再建」を前面に農業や子育て、社会保障、教育に重点配分して経済成長を促し、黒字化に向け税収増を図る政策パッケージも示したい考えだ。

 ただ、公約実現に必要な政策経費は参院選で示した15.3兆円よりも大幅に増える見込みだ。消費税率引き上げについては「無駄遣いを徹底的になくした上で必要なら議論する」(税調幹部)との立場で、財源確保のめどは立っていない。このため、政権獲得後に黒字化断念に追い込まれないための布石でもある。(村松真次)

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 〈プライマリーバランス〉 「基礎的財政収支」と訳され、これが黒字化すると、その年度の税収などにより借金の元利払い以外の歳出をまかなえる状態になる。政府は「骨太の方針06」で(1)社会保障費を07年度から5年間で計1.1兆円抑制(2)公共事業費を毎年1〜3%削減——などを通じ、「11年度の黒字化」の達成を公約として掲げている。

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