政府の知的財産戦略本部(本部長・福田首相)は著作権法を改正し、他人の著作物を利用しやすくするために新規定の創設を検討する方針を固めた。グーグルに対抗した次世代のネット検索エンジンの開発など、ベンチャー企業が新規事業を起こしやすくするのが狙いだ。
具体的には米国の著作権法にある「批評、解説、報道、研究などを目的とする、著作物のフェアユース(公正な利用)は著作権の侵害とならない」という規定の日本版創設を検討する。米国ではこの規定によって、ネット検索エンジンの開発などがしやすくなったとされる。
日本の著作権法は、他人の著作物を勝手に複製したり、ネット配信したりすることを原則として禁止している。その上で、例外として「家庭内での私的な複製はできる」「学校の授業のためにはコピーできる」など著作権が及ばない範囲を個別の規定で列挙し、著作物の利用形態ごとにユーザー側の自由を認めている。
創設が検討されているのはこうした個別規定と別に、公正な利用をその形態にかかわらず広く認める規定だ。
米国の著作権法では「公正な利用」かどうかの判断は、利用の目的が商業性を持つか、利用することで著作物の市場に影響があるかなどが考慮されている。日本版でも「著作権者の利益を不当に害さない」といった条件を付け、ユーザー側はその条件のもとで利用が許されることになりそうだ。
公正利用規定が導入されると、一般ユーザーには、どんなメリットがあるか。遊園地でアニメキャラクターと一緒に撮った記念写真のブログ掲載や、他人の作品を利用したパロディーは、こうした利用を許す個別規定が現行法には無いため、著作権法に触れる恐れがある。しかし、公正利用規定があれば、合法となる可能性もある。
また現在は、ウェブサイトの情報を複製・蓄積する「ウェブ・アーカイブ・サービス」も違法の恐れがある。新規定ができれば、企業はその適用を見込んで事業を始めることができるようになる。
同本部は6月、「知的財産推進計画2008」に検討の方針を盛り込み、知財制度専門調査会(中山信弘会長)などでの審議を経て、09年以降の著作権法改正をめざす。(赤田康和)
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200805260355.html