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2008年05月24日(土) 00時00分

関空貨物便、地方へ翼 福島・佐賀と連携で「ハブ化」へ朝日新聞

 関西空港が貨物の分野で、遠方の地方空港と結びつきを強めている。佐賀空港との間に貨物専用便が就航。福島空港との旅客便の貨物室を使い、福島県産品を海外に輸出する取り組みも始まった。昨年8月の第2滑走路開業で国内唯一の「完全24時間空港」になり、輸出入にかかる待ち時間を節約できるようになったのが功を奏している。旅客では「国際ハブ(拠点)空港」になりきれない関空だが、貨物で夢の実現をねらう。

全日空の貨物機への積み込み作業は連日、夜遅くまで続いている=関西空港、川村直子撮影    

 3月14日、関空を経て香港に着いた福島県産のイチゴ48パックが現地の百貨店に並んだ。福島空港—関空の旅客便を使った福島県の実験だ。2月末に初めて実施した際は気温差のためか白く変色して売れなかったが、温度管理を徹底した今回は異状なし。販売価格は1パック約1800円と国内よりかなり高価だったが、「甘くて、形もいい」と現地の反応は上々だった。

 福島県と関空会社は2月7日、航空貨物での連携を強化する将来構想を発表した。同県は精密機器などの工場が集まり、製造品出荷額が東北で最も高いが、航空貨物輸出の9割は成田空港に頼る。ただ、成田はトラックで5時間程度かかるうえ、騒音規制があって深夜は飛べない。

 そこで関空側が「福島—関空便を使い、深夜便で輸出すれば成田より早い」と持ちかけた。佐藤雄平・福島県知事は「完全24時間空港である関空の活用で、県産品の海外での競争力が高まる」と期待する。今後、周辺県の企業にも利用を働きかけていくという。

 また、全日空は今年1月、佐賀—関空間に毎日1往復の夜間貨物便を就航した。もとは中部空港との間で運航されていたが、「限られた機材、乗員を有効利用するには、24時間離着陸でき、海外路線も豊富な関空に集約するのが有利」(山内一郎・関西貨物郵便部長)。夜には、同社が持つ6機の貨物専用機の大半が関空に並び、忙しく貨物を積み替える光景が見られる。

 佐賀県も関空への移行を歓迎する。旅客は福岡空港に奪われがちの佐賀空港を、物流拠点として浮上させたいとの思惑があるためだ。九州で生産が盛んな電子機器部品などの輸送が中心で、県空港・交通課の担当者は「中部に比べて広い路線網を持つ関空の優位性を企業に訴えていきたい」と話す。

 関空が地方との連携に奔走する裏には「今の関西の需要だけで貨物機を満杯にするのは厳しい」(関空会社役員)という切実な事情もある。

 海上輸送に比べコストが高い航空貨物は企業の景気次第ですぐ減便される。日本最大の国際貨物ハブ空港を目指して国に施設拡充を求めている関空としては、広範な地域から貨物を集め、貨物便を減らさないことが不可欠だ。

 関空会社で貨物営業を担当する畑中伸浩・航空営業部副部長は「北海道や東北、九州で、関空の利用が意外に早くて便利であることをさらにPRしていきたい」と話す。

 ただ2010年には成田、羽田両空港の滑走路が拡張され、貨物便の発着回数も大幅に増える見込みで、影響が予想される。

 大分県の工場でデジタルカメラを生産するキヤノンは現在、6割は関空から輸出するが、残り2割ずつは成田、福岡両空港を使う。担当幹部は「関空は北米や欧州便が少ない。輸出したい日に便がなければ、遠くても路線網が豊富な成田を使うしかない」と課題を指摘する。(加戸靖史、加藤裕則)

http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK200805240047.html