【北京=大野正美】ロシアのメドベージェフ新大統領と胡錦濤(フー・チンタオ)・中国国家主席は23日に北京で開いた首脳会談で、米国が進めるミサイル防衛(MD)計画への反対で一致するなど、「対米牽制(けんせい)」姿勢で共同歩調を示した。だが、経済や軍事技術分野の協力を巡っては最近、両国にきしみが目立っており、首脳会談でも調整は進まなかった。
ロシアは、グルジアやウクライナなど旧ソ連構成国の北大西洋条約機構(NATO)加盟への後押しや、東欧へのMD施設配備などの米国の動きを大きな脅威と見ている。強まる経済力を背景に独自の対外政策を進める中国にも、民主主義や人権の問題で米国よりはるかに立場が近く、チベット問題でも中国政府を全面支持するロシアと組んで「多極的な世界」の構築を進めることは利益となる。
24日、北京大学で講演したメドベージェフ大統領は「ロシアと中国の戦略的協力関係は、すべての国を喜ばせるわけではないが、両国民の利益となる」と強調し、大きな拍手を受けた。
だが、対米姿勢を中心とする外交政策を除けば、関係は微妙だ。07年の中ロの貿易額は400億ドルを超え、前年比4割以上の伸びを示したが、ロシアの輸出は原油や木材などの資源に偏り、中国から工業製品が大量に輸出される構造を受け、ロシア側が85億ドルの輸入超過となった。
特に石油や天然ガスの輸送パイプライン用の鋼管は、安い中国製の輸出が07年第3四半期だけで前年比8倍の伸びを示し、ロシアの鋼管メーカーが中国側に輸出自粛を求める事態に。また、中国製自動車の輸入急増を受け、ロシア政府は昨秋、中国の自動車メーカー4社の組み立て工場建設申請を却下。中国側から「公正な条件での競争を避けている」との不満を招いた。
中国による第三国への武器輸出も火種だ。中国は、ロシアからライセンス供与を受けて生産したスホイ27戦闘機にそっくりなJ11B戦闘機を開発、パキスタンなどに売り込みを図っているとされる。中東やアフリカなどロシア兵器の主な市場にも、連続ミサイル発射装置など中国製のコピー兵器が出回り、ロシア側は法的措置も辞さない構えだ。
ロシア紙「独立新聞」によると、最大の武器輸出先だった中国への輸出額は昨年、前年より60%以上減った。
コメルサント紙によると、メドベージェフ大統領は23日の首脳会談で、武器輸出を中心にした軍事技術協力の落ち込みや、中ロ間のエネルギー協力に展望が見えない現状の改善を強く求めたが、具体的な成果はあがらなかった。
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