2008年05月22日(木) 13時12分
介護現場に人材不足の危機!続出する介護系大学・短大の定員割れ(ダイヤモンド・オンライン)
私立大学、短期大学の定員割れが問題になって久しい。中でも、入学者の減少が目立つのは看護、福祉系統だ。日本私立学校振興・共済事業団の平成19年度入学定員充足率のデータによると、充足率の低下幅が平成18年度と比べ最も大きかったのが看護、福祉系統だ。介護福祉士を養成する大学(短期大学を含む)では、養成課程入学者の定員割れが相次いでいる。
日本ホームヘルパー協会会長兼福岡県介護福祉士会会長の因利恵氏は次のように話す。
「今年、介護福祉養成施設は2割が定員割れになっているといいます。定員充足率が2分の1を下回る学校も多くあります。非常に危惧すべき状態にあります」
福岡のある大学では、ここ数年定員割れが続き、定員の見直しを検討している。この学校関係者は次のように語る。
「福岡近郊ではおよそ3分の1の学校が定員削減を実施、または検討しています。なかには、募集停止をした学校もあります。九州に限らず全国的に同じ傾向にあります」
原因は介護に対する待遇の悪さにある。
「昨年、コムスンの問題が報道されたとき、パートタイマーやホームヘルパーなどに焦点が当てられ、テレビに登場しました。確かに、介護の仕事はラクとは言えません。が、介護に携わる仕事でも介護福祉士、ケアマネジャー、ホームヘルパー1級、2級とそれぞれ役割が違います。介護に関する仕事の中でも、賃金が安く、労働がきつい部分が強調されたことで、全てが、実際よりもずっと待遇が悪いような印象が根付いてしまったように思います」
年々、介護福祉士希望者が減少しているところに、コムスンの問題が追い討ちをかける形になった。
ただし、この状況を関係者は手を拱いて眺めているわけではない。2008年4月25日、介護労働者の賃金をはじめとする処遇改善の法案(注1)が衆議院で可決された。現在、参議院にて審議中である(注2)。法案が施行されれば、介護福祉士の処遇は改善されるのだろうか。
介護福祉士は仕事がきつい分、賃金は悪くない、という認識が広まれば、介護福祉士の定員割れは改善する可能性は高くなる。そもそも、少子化などの影響により、他の学部を含め定員割れの虞がある学校は多い。平成10年度では入学定員充足率が100%未満の学校は全体の8.0%だったが、平成19年度は39.5%に上っている(注3)。
とくに、短期大学は平成19年度で61.6%と圧倒的に高い。少子化が進む状況下、介護福祉士を養成する大学、短期大学だけが大幅に状況を改善することは困難である。法案の効果について、今後が気になる。
(江口陽子)
(注1)介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律案
(注2)2008年5月12日現在
(注3)日本私立学校振興・共済事業団より
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