大阪府東大阪市の東大阪大生ら2人が06年6月、岡山市で生き埋めにされた集団暴行殺人事件の主犯格とされ、殺人や監禁などの罪に問われた無職小林竜司被告(23)の控訴審で、大阪高裁は20日、求刑通り死刑とした昨年5月の一審・大阪地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却する判決を言い渡した。若原正樹裁判長は「前途ある若者2人の命が奪われた残虐で冷酷な犯行で、社会に与えた衝撃と脅威は大きい。被告が若く、更生の可能性があることを考慮しても極刑はやむをえない」と量刑の理由を述べた。
控訴した被告・弁護側は事実関係を争わず、「殺害の意思や計画は当初はなく、犯行には偶発的側面もあった」と情状酌量を求めた。だが判決は、集団リンチが警察に発覚するのを恐れて生き埋めにした経緯などから「偶発的とはいえない」と退けた。さらに、被告側が「遺族に謝罪の手紙を書き、冥福を祈って写経も続けるなど反省を深めている」として死刑回避を訴えたことについて、判決は「犯行当時21歳で、更生の可能性は否定できない」としつつ、「犯行の態様や結果の重大さに照らすと、死刑を回避する決定的な事情とまではいえない」と判断した。
判決によると、小林被告は、幼なじみで東大阪大3年だった佐藤勇樹受刑者(23)=殺人罪などで懲役9年が確定=が、同大4年の藤本翔士さん(当時21)らとの間で女性をめぐるトラブルに巻き込まれたと知って立腹。06年6月19日、藤本さんと友人の無職岩上哲也さん(同21)を岡山市内に呼び出し、仲間とともにゴルフクラブや警棒で殴るなどの暴行を加えた。その後、2人を市内の産廃集積場に生き埋めにして殺害した。
この事件では、小林被告のほかに7人が逮捕・起訴され、うち3人は懲役7〜15年の実刑が確定。残る4人は同11年〜無期懲役とした一審や二審の判決後にそれぞれ控訴や上告をしている。
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大阪高裁の大法廷で再び死刑が宣告されると、小林竜司被告(23)は背筋を伸ばしたまま、正面の裁判長をじっと見据えた。丸刈り頭に黒縁眼鏡、黒いカーディガンにズボン姿。裁判長から判決理由を座って聞くよう促されると、はっきりした口調で「失礼します」と言い、着席した。
弁護人によると、小林被告は大阪拘置所の収容室で小さな仏壇に手を合わせ、被害者の冥福を祈る日々を送っている。「本当に重大な罪を犯してしまった。ご遺族の怒りを思えば、死刑になっても仕方ないように思う」。そう話す一方で、死刑廃止を訴える市民団体の活動に関心を寄せ、新聞記事など関連資料を集めているという。
1月に始まった控訴審では、謝罪の手紙を遺族に渡そうとして断られたことを打ち明け、眼鏡の奥の両目をしばたたかせた。「許されるなら、生きて罪を償う道を歩ませてほしい。冥福を祈りながら残りの人生を過ごしたい」。最近の接見では、弁護人にそんな心境も語っていたという。
判決後、弁護人は「別の被告の役割も大きいのに、真相が解明されていない。判決には疑問を感じる」と話した。上告するかどうかは本人と話し合って決めるという。