【バンコク=山本大輔、ニューヨーク=松下佳世】潘基文(パン・ギ・ムン)国連事務総長が22日にミャンマー(ビルマ)入りし、軍政トップのタン・シュエ国家平和発展評議会議長と会談する見通しとなった。援助がサイクロン被災者の「4分の1にしか届いていない」(潘氏)という危機的状況が続くなか、トップ会談で事態打開の道が開けるかが焦点だ。
訪問に先駆けて同国入りしている国連のホームズ緊急援助調整官(事務次長)が20日、ヤンゴンで軍事政権ナンバー4のテイン・セイン首相と会談。その後の会見で、タン・シュエ議長と潘氏が「会うことになるだろう」と述べた。潘氏も20日、記者団からタン・シュエ議長との会談の見通しを問われ、「議長や軍政幹部と会うことを期待している」と答えた。
軍政側は会談について何もコメントを出していないが、国連側の見通し通り実現すれば、被災以来、事務総長との電話会談すら拒み続けてきたタン・シュエ議長が一転、方針を変えたことになる。
07年1月の就任後、初めてミャンマーを訪れる潘氏は22日朝ヤンゴンに入り、被災地を視察。いったん出国してタイのサマック首相らと会談し、再び25日朝にヤンゴン入りする。軍政は被災地では延期されていた新憲法案の是非を問う国民投票を24日に実施する予定で、潘氏は政治的介入を懸念する軍政側に配慮し、23日にいったん出国する日程を組んだ。
事務総長報道官は19日の会見で、潘氏の訪問は「ミャンマー政府からの招待に基づく」と説明。「独裁体制のミャンマーから譲歩を引き出すには、軍政トップとの直接会談しかありえない」(国連筋)とみており、トップ会談の実現で軍政が態度を軟化させるよう期待している。
軍政側が国連トップの受け入れに転じたのは、国際社会からの完全な孤立を避け、被災地の限定的な視察を許すことにより、復興に向けた自助努力をアピールしたい考えがあると見られる。
軍政は欧米も含め各国から援助物資の受け入れは認めたが、医師などの人的援助は中国やインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)などの友好国にとどめ、欧米などには入国査証の発行をかたくなに拒んでいる。
今回のトップ会談により、人的援助の受け入れ拡大に向けた具体的な約束が軍政から取り付けられるかどうかは見通せない。自宅軟禁中の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんとの面会の予定もなく、目に見えた成果が出せなければ、国連のメンツに大きな傷がつく可能性もある。
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