【シャルムエルシェイク(エジプト)=梅原季哉】ブッシュ米大統領は18日、シャルムエルシェイクの国際会議で演説した。残り任期が少なくなったブッシュ氏は、今回の訪問で停滞する中東和平のてこ入れを図ったが、合意実現への具体策は提示できないまま歴訪を終えた。
ブッシュ氏は演説で、持論の「民主化推進によるテロ撲滅」を強調。任期内の重要課題として掲げるイスラエルとパレスチナの和平に関して、「年内の和平合意は達成可能だと信じている」と述べた。
だが、15日のイスラエルでの演説では同国を手放しで礼賛したのに、和平の具体案には言及せずじまい。アラブ側から反発を買った。
ブッシュ氏も目標を下方修正。昨年11月の米アナポリス中東和平会議では「(イスラエルとパレスチナの)2国家共存方式による平和条約妥結」と語っていたが、最近は「パレスチナ国家の定義で合意する」という表現にトーンダウン。仮に合意しても、パレスチナ国家の国境や首都、難民の取り扱いなどの「将来像」が決まるにすぎない。
それでも、ハドリー米大統領補佐官は、今回の歴訪は和平への悲観的な見方を一掃し、「大統領がなお全面的に肩入れしていることを示す」のが狙いだったと強調。ブッシュ氏の任期内の中東再訪の可能性にも含みを残した。
一方、ブッシュ氏にとってより大きな頭痛のタネは、テロ支援国家とみなすイランにどう対処するか。イラク、パレスチナ、レバノンなどの反米勢力の背後にイランがちらつく。核開発を凍結しない限り直接交渉はしないとしてきたブッシュ氏の立場では、打つ手は限られる。
ブッシュ氏は演説で地域諸国に「イランとシリアによるテロ支援を止めさせなければならない」と呼びかけたが、イラン封じ込め網構築への足並みはそろっていない。
アサヒ・コムトップへhttp://www.asahi.com/international/update/0518/TKY200805180141.html