【北川(中国四川省)=小山謙太郎】17日午後3時すぎ、救出作業を続けていた数千人の人々が急に騒がしくなり、作業を止めて一斉に町を脱出し始めた。あちこちで警笛やサイレンが鳴る。避難命令が出たのだ。「ダムが壊れるぞ! 危ない!」「テレビのニュースで言っていた。みんな早く逃げろ!」
中国・四川省北川で17日、ダムが決壊する恐れが出てきたため、住民や救助隊員ら数千人が走って高台に避難した=ロイター
中国四川省北川チャン族自治県の中心地、曲山地区はれんが造りのビルが立つ山あいの町だ。6、7階建てを含むすべての建物が倒壊した上、目抜き通りは長さ500メートル以上、高さ20メートル以上の巨大な山崩れに襲われた。今も多くの住民らが生き埋めのままだ。
そこへ、新たな災害の危機。救助隊や軍隊も列をなして高台を目指す。道を無視してがけをよじ登る兵士が大勢いる。高台に出ると、道路は足早に山を下りる人々や、軍のトラックでごった返した。兵士らの顔は混雑の先を見据えてこわばったまま。「一般人と車を先に通せ。軍は後だ」。部下を指揮する上官の声もうわずっている。
町の入り口から約3キロ。記者が止めていた車に戻ると、運転手の隣に見知らぬ男性が座っていた。「早く車を出してくれ。土石流が来るから逃げろと上司に言われたんだ」。地元・四川テレビの若い記者だった。1時間後。車がふもとの市街地まで下りると彼は言った。「ああ、ここまで来れば安心だ。地震よりも怖かった」
アサヒ・コムトップへhttp://www.asahi.com/international/update/0517/TKY200805170235.html