「春町(はるまち)と言ったのに、ここは原町(はるまち)じゃないか」。タクシー運転手が乗客にそんな因縁をつけられ、高額な金を要求されるトラブルが3月ごろから福岡市内で相次いでいる。市タクシー協会は「すぐに警察に届け、無理な要求には毅然(きぜん)と対応して」と、加盟社に呼びかけている。
同協会によると、5月12日午後10時ごろ、同市東区で乗車した男が「はるまち」と行き先を告げ、運転手は粕屋町の「原町」に向かった。男は道中、黙っていたが、到着した途端、「ここは違う。行き先は(博多区の)春町だ」と言い出し、「集金が間に合わなかったから5万円を払え」と要求してきたという。
3月末には、同市の繁華街で乗車した男が、目的地を城南区の「金山(かなやま)団地」と告げたが、同団地に着くと、「行き先は(東区の)金平(かねひら)団地(浜松住宅)だ」と抗議。同様の口実で10万円の支払いを求めてきたという。
先月26日にも、男2人が市内のタクシー会社を訪問。街中で乗車拒否に遭ったと告げ、「約束した人と会えなかった。損害賠償してほしい」と、車両番号を指摘。運転手に10万円を求めたケースがあった。
いずれも会社がすぐに警察に相談するなどし、金銭的被害はなかったという。同協会によると、30代の同じ男が複数のトラブルにかかわっているらしい。
刑事事件に詳しい弁護士は「『集金』がうそだったり、脅しがあったりすれば詐欺や恐喝罪が成立しうる」と指摘する。
同協会は「もめごとを避けようと、金を払った運転手もいるかもしれない。県内には似た地名が多いので、目的地をしっかり確認して向かうように」と話している。(小林豪)
アサヒ・コムトップへhttp://www.asahi.com/national/update/0517/SEB200805170010.html