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2008年05月14日(水) 16時04分

元公安庁長官の緒方被告、無罪を主張…総連詐欺事件初公判読売新聞

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部を巡る詐欺事件で、詐欺罪に問われた元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)被告(73)と元不動産会社社長、満井忠男被告(74)の初公判が14日、東京地裁であった。

 緒方被告は罪状認否で「審理を通じ、無実が証明されると確信している」と述べ、全面無罪を主張した。一方、検察側は冒頭陳述で、2人は緒方被告の肩書を利用して朝鮮総連側を信用させて犯行に及んだと主張した。

 「刑事事件として取り上げたこと自体が間違っている」。緒方被告は罪状認否で、“古巣”の検察当局との全面対決を宣言した。黒のスーツに弁護士バッジを付けて入廷。「なぜ朝鮮総連の被害届や告訴がないまま起訴を急いだのか。検察の意図を理解できない」と、強い口調で捜査を批判した。満井被告も「事件は国策捜査だ」などと訴え、無罪を主張した。

 検察側は冒頭陳述で、緒方被告が1998年以降、満井被告の代理人として不動産取引などを手掛けて多額の報酬を得る過程で、「弁護士と依頼者の関係を超えた親密な関係を築いた」と指摘。2007年3月、中央本部の売却話を持ち掛けられた際、東京・六本木のビル地上げで1億〜2億円を必要としていたことから、「元検事長の高い信頼度を生かして金をだまし取ろうとした」と述べた。

 検察側は、緒方被告が在日朝鮮人の境遇に共感しているように装って朝鮮総連側を信用させ、現金4億8400万円と中央本部の土地建物をだまし取ったと主張。さらに、「私が前面に出て動く話だから、面倒を見てもらわないと困る」と満井被告に報酬を要求し、詐取金から1億円を受け取ったと指摘した。

 一方、弁護側は冒頭陳述で、「緒方被告が取引に関与したのは、在日朝鮮人の権益を守る重要な拠点を確保する必要があり、(公安調査庁が)朝鮮総連を見守る上で拠点が固定されていた方が国益に沿うと考えたから」などと主張。「現金や土地建物をだまし取った事実はない」と反論した。

 朝鮮総連の中央本部を巡っては、整理回収機構が約627億円の返還を求めた訴訟で朝鮮総連側の敗訴が確定し、機構が強制執行(競売)のための手続きに入った。しかし、登記上の名義が朝鮮総連でないことから、機構側が訴訟を起こし、判決確定までは立ち退きを迫られることはない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080514-00000036-yom-soci