歩行困難な母親への殺害目的に硫化水素ガスが使われようとしていた。殺人未遂容疑で1日、桑折署に逮捕された桑折町南半田の農業松野信也容疑者(49)は調べに対し、母親(82)とのトラブルを動機に挙げたが、近所の住民からは「母の介護を一生懸命取り組んでいたのに、信じられない」と驚きの声が上がった。
発表によると、松野容疑者は30日午後4時50分ごろ、寝室のベッドで横になっていた母親を殺害しようと、洗剤を混ぜて硫化水素ガスを発生させようとした疑い。父親(80)が見つけて制止すると、近くの山林に逃げ込み、父の110番通報で駆け付けた同署員に約2時間後に発見された。
犯行に気付いた父親は松野容疑者について「(30日の)朝からそわそわして、様子がいつもと違っていた」と話しているという。
捜査関係者によると、松野容疑者は30日に洗剤を購入しており、同署は動機をさらに追及している。
近所の住民の話によると、松野容疑者は自宅前の畑でブドウや桃、リンゴなどを栽培。父親も農業を手伝うことはあったが、ふだんは松野容疑者1人でほとんどの作業をしていた。近くの男性(71)は「農作業中でも帽子をとってあいさつするほど律義な人だった」と話し、運送業の男性(60)は「無口だったが非常にまじめな人。なぜこんなことになったかわからない」と首をかしげた。
同町などによると、母親は要介護3と認定され、車いすを使う生活をしている。3年ほど前から町内にある高齢者福祉施設を利用し始め、最近では1月15日から4月18日まで入所し、退所後は自宅介護を受けていた。近所の人は、松野容疑者が母親を施設や病院に車で連れて行く姿をたびたび見ており、近くの女性は「母親の介護を熱心にしており、トイレも手伝っていると聞いたことがある。まさかあの人が……」と絶句していた。
硫化水素ガスを巡っては、全国で自殺が相次いでいるが、警察庁によると、殺人未遂事件はほとんど例がないという。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukushima/news/20080501-OYT8T00874.htm