2008年05月02日(金) 16時18分
船場吉兆 食べ残し、別の客に 刺し身やアユ塩焼き(産経新聞)
牛肉の産地を偽装表示していた高級料亭「船場吉兆」(大阪市中央区)が、本店の料亭部門で客が残した刺し身やアユの塩焼きなどの料理をいったん回収し、別の客に提供していたことが2日、関係者の証言で分かった。料亭経営を取り仕切っていた当時の湯木正徳前社長(74)の指示で昨年11月の営業休止前まで常態化していたとみられる。一連の不正表示とともに、老舗の高級料亭としてのモラルが改めて問われそうだ。大阪府警も従業員らの事情聴取で、こうした証言を把握している。
一方、九州産牛肉を但馬牛などと偽って販売した偽装表示事件について、府警は、表示変更のコストを節約するために偽装を継続したとみて、不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で湯木前社長と長男の喜久郎前取締役(45)らの書類送検に向け、詰めの捜査を急いでいる。
関係者によると、使い回しは、本店の調理場で、仲居が客席から下げてきた器を回収。客がはしを付けた料理は調理人が廃棄するが、はしを付けずに残った料理の一部はいったんトレーなどに移し替え、器に盛り付け直して別の客に提供していたという。
使い回されていたのは、アユの塩焼き、ゴボウをうなぎで包んだ「八幡巻き」、エビに魚のすり身を塗って蒸した「えびきす」など。天ぷらは揚げ直して出すこともあった。さらに、手付かずで残った刺し身も提供していた。
接待の宴席などでは、比較的食事に手をつけない接待側の客に使い回しの料理を出していたといい、元従業員は「先輩の調理人から『使えるものはすべて使う』と指示され、残った料理をえり分けていた。一人数万円の料金を取っていた高級料亭として恥ずかしい」と話している。これらの使い回しについては、府警も一連の捜査の過程で事情を把握しているという。
食品衛生法は、腐敗などで健康を損なう恐れがある食品を販売することを禁じているが、使い回しに関する規定はないという。厚生労働省の担当者は「品質が保たれていれば法律には抵触しない。あくまでモラルの問題だろう」と指摘している。
船場吉兆の代理人弁護士は使い回しについて「そうした行為は判明していない」としている。
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【用語解説】船場吉兆の偽装表示事件
福岡市の店舗で昨年10月、消費期限の切れた菓子の販売が発覚。その後、「但馬牛」などと表示したみそ漬け商品に九州産牛肉を使用した産地偽装が明らかになり、大阪府警が同11月、不正競争防止法違反容疑で本店(大阪市)などを家宅捜索した。船場吉兆は一連の不正表示で資金繰りが悪化し、今年1月に民事再生法の適用を申請。現在、本店と博多店(福岡市)の営業を再開し、経営再建中。
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