硫化水素自殺の多発を受け、警察庁は三十日、「簡単に死ねる」などの表現とともに硫化水素の発生方法を記したインターネット上の書き込みについて、周囲を巻き込んだ傷害や傷害致死事件を誘発するとして「有害情報」に指定した。民間団体を通じ、プロバイダー(接続業者)やサイト管理者に削除を要請する。
自殺者の多くがネット情報を参考にしているとみられ、周辺住民や消防署員、警察官など第三者に被害が及んだり、死亡させる恐れがあると判断した。ただし、実際には学術目的での記載もあるため、化学式や特性などの情報に加え「簡単に作れる」「確実に死ねる」などといった表現があることを要件とした。
警察庁は「要請に強制力はないが、少しでも二次被害拡大に歯止めをかけたい」としている。
全国の警察などが一月以降に公表した硫化水素自殺は少なくとも七十件以上で今年に入り急増。四月二十三日には高知県香南市で女子中学生が自宅で自殺、周辺住民十四人が入院し、約百二十人が避難するなど、第三者が被害を受けるケースが多発している。
復讐(ふくしゅう)請負、薬物取引などの有害情報をめぐっては二○○六年六月から、警察庁が委託した民間団体「インターネット・ホットラインセンター」が一般からの情報を受け付け、プロバイダーやサイト管理者に削除要請する制度が始まった。
硫化水素の発生方法については、神奈川県警や京都府警などがすでに独自にプロバイダーへの削除要請を行っている。