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2008年04月30日(水) 15時02分

硫化水素の自殺法「有害情報」指定へ 警察庁、削除促す朝日新聞

 硫化水素自殺の多発を受け、警察庁は、その手法を記したインターネット上の書き込みについて、周囲を巻き添えにする傷害事件を誘発する危険な情報と判断し、「有害情報」に指定する方針を固めた。ネット接続事業者(プロバイダー)などに書き込みの削除を働きかけ、自殺や二次被害の防止を図る狙いだ。

  

 頻発する硫化水素自殺の問題で、同庁が対策を打ち出すのは初めて。「二次被害が発生しており待ったなしと判断した」としている。ネット接続事業を管轄する総務省と表現の自由との兼ね合いも含め最終調整する予定だ。

 同庁はネット上の情報について、麻薬や売春の広告など書き込み自体が犯罪になるものを「違法情報」に、違法ではないが公序良俗に反するものを「有害情報」に分類している。委託先の民間団体インターネット・ホットラインセンター(http://www.internethotline.jp/)が一般からの情報を元に、違法情報については同庁に通報する。有害情報についてはプロバイダーやサイト管理者に削除を依頼している。

 自殺に関する記述をめぐっては従来、集団自殺を呼びかけるなど自殺を勧誘・誘引する書き込みを有害情報としてきた。自殺の手法は、それだけでは勧誘・誘引しているわけではないため、有害情報にはしていなかった。

 だが、硫化水素は高濃度だと、数回吸っただけで脳の中枢神経が破壊されて呼吸ができなくなり、死亡したり、重度の後遺症が残ったりする。そのため、自殺を図った人だけでなく、家族や近隣住民、助けようとした人も巻き込まれるケースが相次ぎ、同庁は放置できないと判断した。

 このため同庁は、硫化水素の発生方法や自殺方法を詳細に書き込むだけでも、他の人を傷つける「傷害行為」につながると認定。他の自殺方法とは区別し、犯罪を誘引する危険な情報として、有害情報に指定することにした。

 同庁は対象を、硫化水素ガスの発生や自殺の方法が正確かつ詳細に記述されている場合などを想定。削除依頼は強制ではなく、プロバイダーの自主性に任せる。

 ネット上の硫化水素自殺情報をめぐっては、すでに、警視庁や神奈川県警、京都府警、兵庫県警など各地の警察が、プロバイダーに発生方法の書き込みの削除や記述の再考を求める要請を始めている。警察庁の有害情報指定はこれを、制度的に後押しする狙いがある。

 同ホットラインセンターには07年、3600件の有害情報が寄せられた。うち、国内のサーバーから発信されている1639件について、プロバイダーなどに削除を依頼した結果、約74%の1220件が削除された。

 硫化水素自殺の情報についてはこれまで、未成年者の閲覧制限をかけるフィルタリングサービス提供業者に通報してきたが、同サービスを利用している未成年者以外への対応は難しかった。(野田一郎) アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0430/TKY200804300172.html