朝日新聞阪神支局襲撃事件で亡くなった小尻知博記者(当時29)の遺族らは命日を前に、今も消えぬ悔しさ、事件が風化することへの不安を語った。
京都府内でピアノ教師をする妻裕子さん(48)は「21年たった今も主人の命を奪った犯人は許せません。私たちの深い悲しみは一生消えることがない」と話した。
娘の美樹さん(23)は社会人になって1年。仕事先で父と同世代の人と出会うと、「父が生きていたら今ごろどんな仕事をしているか、どんな上司になっているかなどと考えます」と、亡き父に思いをはせる。
広島県呉市に住む両親は、寄る年波を感じながら事件の真相解明を待ち続けている。父信克さん(80)は昨年暮れ、長崎県佐世保市で起きた銃乱射事件で散弾銃が使われたことを知ったとき、「もしや息子の事件と関係があるかもしれない」と胸騒ぎがしたという。市民が銃の犠牲になる事件は後を絶たない。「そのたびに息子のことを思い、腹が立ちます。息子のこと、事件のことをいつまでも忘れないでください」と訴えた。
母みよ子さん(76)は足を悪くするなど体調が優れない。今年も命日を前に、心境を俳句に詠んだ。
先立たる吾子(あこ)の忌近し散る桜
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朝日新聞阪神支局(兵庫県西宮市与古道町)は5月1〜3日(午前10時〜午後6時)に「『みる・きく・はなす』はいま」展を支局3階で開き、言論が暴力や圧力にさらされた過去の事件を写真パネルや新聞記事で振り返る。無料。3日午前9時〜午後8時は拝礼所を支局1階に設ける。