記事登録
2008年04月24日(木) 00時00分

住民が1階に密集、被害拡大 高知・硫化水素自殺朝日新聞

 高知県香南市の市営住宅で23日夜起きた硫化水素自殺が原因とみられる異臭騒ぎで、死亡した女子中学生が倒れていた3階自宅の浴室には複数の洗剤の容器が散らばり、衣装用とみられるケースの中に濁った液体がたまっていたことがわかった。約70人が体調不良で受診するほど二次被害が広がったことについて、地元消防本部は、避難の際に住人が狭い範囲に集まり、有毒ガスを吸ったのが一因とみている。

硫化水素による異臭騒ぎがあった市営住宅に向かう捜査員ら=24日午後0時14分、高知県香南市、矢木隆晴撮影

 消防や県警によると、浴室にあったケースには白濁してやや緑色がかった液体が深さ2、3センチ残っていた。浴室のドアは目張りがしてあった。女子中学生のそばにはノートと携帯電話が置いてあったという。

 住人は、約20人が頭痛などを訴えて病院に運ばれ、ほかに約50人が診察を受けた。各病院によると、計14人が一時入院し、うち1人が一時意識不明になった。

 市営住宅は南北に2棟が隣接して立っていて、計約60世帯170人が住んでいる。23日夜に近くの体育館に避難した約70人はその場で一夜を明かした。

 硫化水素を使った自殺では、家族や周囲が助けようとして巻き込まれる例が後を絶たないが、これほど多数の住民が被害を訴えたのは極めて異例だ。

 取材に応じた住人の大半は、室内ではわずかに異臭を感じた程度だったと証言した。その後、救急車やパトカーが駆けつけ、現場に近い1階付近に多くの住民が集まった。間もなく近くの体育館に避難したが、その際、「気分が悪い」と訴える人が相次いだという。

 高濃度の硫化水素は数回吸っただけで、失神して死亡するほど毒性が強いとされる。現場の浴室に換気扇はなく、ドアと窓を閉めれば密閉状態になるといい、ドアを開けたことで空気より比重が重い硫化水素が下へ流れ出した可能性がある。香南市消防本部の山崎良満次長は「現場の下に人が集まってしまい、多くの人が硫化水素を吸ったのではないか」とみる。

 現場には「毒ガス発生中」と注意を促す張り紙があった。硫化水素自殺の方法を紹介するインターネット掲示板には、こうした張り紙をすることが二次被害防止のための「マナー」と記されており、過去の同種自殺でも同じ趣旨の紙が張られるケースが目立つ。毒物に詳しい吉田武美・昭和大教授は「張り紙を見つけても一般人は近づいてはならない。助けようとして人工呼吸などをしたら、たちまち被害を被る。防護マスクなど装備の整った救急隊員に任せるしかない」と話している。

http://www.asahi.com/kansai/kouiki/OSK200804240031.html