記事登録
2008年04月22日(火) 16時19分

元少年に死刑判決、光市母子殺害事件オーマイニュース

 1999年、山口県光市で母子を殺害したとされ、死刑を求刑された事件当時18歳1カ月の元少年に対する差し戻し控訴審の判決公判が22日午前、広島高裁であり、楢崎康英裁判長は無期懲役とした一審判決を破棄、求刑通り死刑判決を言い渡した。

 犯行時に未成年だった被告への死刑判決が確定した例は、戦後、過去に2件あるが、いずれも犯行時19歳で被害者は4人。だが光市事件の被告は、少年法の適用基準である18歳を過ぎたばかりの少年で、被害者も2人と、一般的にいわれる死刑判決の水準よりも数字の上では少なかった。今回の判決は、少年事件の厳罰化の流れを決定づける意味を持つといえる。

 テレビ中継によると、傍聴席で判決を聞いた本村洋さんは閉廷後、記者会見し、

「裁判所の見解は極めて真っ当で、いい判決だったと思う。司法には感謝している。だが、決して喜ばしいことではなく、厳粛な気持ちでこの判決を受け止めている。遺族としては応報感情が満たされたわけだが、社会としては私の妻と娘、加害者の3人の命が奪われた。こうした死刑という残虐な刑罰が、どうしたら下されない社会になるのか、どうしたら死刑という判断が下されるような犯罪が減らせるのかということを、社会として考えなければならないと思う」

「1 審、2審で認めてきたことを、被告がこの差し戻し審でひるがえしたことが一番悔しい。被告には、最後まで事実を認めて、誠心誠意謝罪してほしかった。そうすれば死刑は回避されたかもしれない。なぜ(差し戻し審では)これほど遺族の感情を逆なでしてまで嘘の供述をしたのか、理解できない。被告には判決文をしっかり読み、本当に反省してほしい。そういった境地に達して、堂々と刑に向かってほしいと思う」

と話した。

 一方、被告弁護団も午後から記者会見し、上告することを報告した。判決文の中で、被告と弁護団の主張は「不自然で信用できない」と断じられたことについては、安田好弘弁護士が

「自白ではなく、客観的事実と、それに基づいた専門家の鑑定結果を以てもう一度吟味し直すべきだと主張したが、受け入れられなかった。(首を絞めたときの手の向きなどこれまでの認定とは矛盾する事実を証明したにもかかわらず)捜査段階の供述が見直される事は一切なかった」

「被告が差し戻し審で話したことは、聴く人にとっては唐突だったかもしれない。だが彼にとっては、その供述によって有利になるか不利になるかを問わず、すべてを話すという態度で話した。裁判所は、そうした彼の態度を見誤っている」

と批判した。弁護団に加わっているほかの弁護士もまた、

「裁判所は、18歳という未熟な精神状態にある少年像を捉え損なっている。つまみぐい判決と言わざるを得ない」

「いろいろな意味で不幸な判決。彼の声はやはり届かなかった、というより、裁判所が受け付けなかった。(加害者の声という)そういうものを受け付けない、大きなものが社会に広がっていることを、危ぐしている」

と判決を批判した。

 事件は99年4月14日、山口県光市の本村洋(もとむら・ひろし)さん方で、妻・弥生(やよい)さん(当時23歳)と長女・夕夏(ゆうか)ちゃん(同11か月)が絞殺されているのが見つかったというもの。

 事件の4日後、山口県警は元少年を殺人容疑で逮捕。元少年は後に殺人罪、強姦致死罪、窃盗罪で起訴された。検察側は元少年に死刑を求刑したものの、1審、2審とも無期懲役判決だったため、検察側が上告。

 2006年6月、最高裁は各種の事情を踏まえたうえで「18歳とはいえ、特に酌むべき事情がない限り死刑を選択するほかないものといわざるを得ない」として2審判決を破棄、審理を広島高裁に差し戻した。

 また、差し戻し控訴審では、死刑制度廃止を強く訴えている弁護士も含む22人の弁護士からなる大弁護団が元少年につき(途中、1人が解任)、存在感を示した。これが弁護団が死刑制度存廃論議に事件を利用しているとの憶測も呼び、弁護団に参加する弁護士に対する懲戒請求が殺到するなど異例の事態にも発展した。

 差し戻し控訴審では、再上告が可能なため、今回予想される判決が最終的に確定するかどうかは不明だが、もし極刑が確定した場合は、事件発生時に未成年者に対する被告への戦後の死刑適用事例としては1965年の少年ライフル魔事件、1968年の永山則夫連続射殺事件、1996年の市川一家4人殺人事件につぐ、4例目となる。

 きょうの控訴審には26席の一般傍聴券を求め、傍聴希望者席3886人が列をなした。

(記者:OhmyNews編集部)

【関連記事】
OhmyNews編集部さんの他の記事を読む
【関連キーワード】
母子殺害事件
光市

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000006-omn-soci